放射性物質から身を守るために

1. ホウレンソウになぜ放射性物質が多いのか
テレビを見ていると、ホウレンソウをはじめ、放射性物質が見つかった野菜を「これくらいの放射線の量なら安全です」と放射線にくわしいという医師が口そろえていっている。しかし、安全ならば、なぜ政府は「出荷停止」「摂食制限」をするのか。なぜ、それが必要なのか。
1年間に食べる量なら安全ですと彼らがいえばいうほど、見ている人は矛盾を感じ、ひょっとしたら何か隠しているのではないかと思う。じつは、ここから風評は生まれる。風評は、矛盾があるところから発生するのである。
やはり現時点では、食べないほうがいいですよ、といってくれたほうが安心する。
そして、なぜ食べないほうがいいのかということをきちんと答えたほうがいいのに、それをいわないのはなぜだろう。
パニックが起こると思っているのだろうが、正確な情報を知れば、風評やパニックはかえって起きないのではないだろうか。わたしたちはそんなに愚かではない。
野菜だけではないが、安心、安心といえばいうほど、そこにかえって疑問を抱いてしまう。
そして、それが風評を生んでいることに気がつかない。もしくは、気づかないようにしているのではないかと勘ぐってしまう。
少し原点にかえって、なぜホウレンソウに放射性物質が検出されたのだろうか。ほかの野菜は大丈夫なのか。そこから、調べてみた。
ホウレンソウは、野菜の中でもカリウムが多い野菜である。そして同じように放射性物質が発見されたパセリにもカリウムが多い。カリウムが多い野菜ほど、放射性物質が多く検出されている。耳慣れないかき菜というアブラナ科の野菜もカリウムが豊富。かき菜は栃木県で栽培されている伝統野菜。
そして、ここがポイントになるが、カリウム放射性物質であるセシウムがよく似ているのである。科学的な性質がよく似ているという。
http://www.ies.or.jp/japanese/mini/mini100_pdf/2007-05.pdf
ホウレンソウやパセリ自身がカリウムをつくりだしているわけでないから、土壌からカリウムをせっせととりこんでいることになる。ホウレンソウやパセリは、本来カリウムが好きな野菜らしい。
今回、大好きなカリウムの代わりに、よく似ている原発事故から放出された放射性物質セシウムを間違ってとりこんでしまったようだ。もちろん、彼らには罪はない。
結果、ホウレンソウは放射性物質に汚染されてしまった。
カリウムと同じように放射性物質をとりこんだと思われるのが、牛の生乳である。
これまた、なぜ生乳に放射性物質が多いのかを疑問に思っていたところ、放射性物質であるストロンチウムが、カリウムセシウムと同じように、カルシウムをよく似ているという。
現在、ストロンチウムが放出されたかどうかはわからないが、乳牛が空気中のストロンチウムをカルシウムと間違えてとりこんでしまい、それが生乳に出てきているのではないだろうか。別の観点に、生物濃縮が考えられるが、今回はそれは置いといて。
カリウムセシウムの関連も、あくまでも可能性だが、かなり信憑性があると思っている。しかし、生乳に関しては、ストロンチウムが放出されたかどうかわからないので、生乳に放射性物質が多い理由として、ストロンチウムとカルシウムの関連では説明できない。

2. 放射性物質から身を守るには
放射性物質ヨウ素が、甲状腺に蓄積して、甲状腺がんを引き起こすことはわかっている。
そこで、安定ヨウ素剤を前もって服用しておくことで、甲状腺ヨウ素を送り込んでおくと、放射性物質ヨウ素甲状腺に入り込むことができずに、からだの外に排出される。
どのタイミングで服用するかが、むずかしい。放射線物質がたくさん出てきたときに飲まなければ意味がない。また、ヨウ素はとりすぎにも注意が必要だ。安定ヨウ素剤の服用は医師の指示が必要である。
わたしたち日本人は、ワカメや昆布といった海藻をよく食べている。日ごろからヨウ素は足りているといわれているが、あらためて放射性物質をとりこまないためにも1日1グラム程度の昆布などの海藻をとっておくといいようだ。ただし、とりすぎには要注意。ちなみにとろろ昆布はひとつまみで1日の許容量を超えてしまう。たまにはいいが毎日はだめ。
からだの中で必要不可欠の量が保たれていると、外から入ってきたものも通り過ぎてしまうという仕組みがわたしたちのからだにはあるようだ。
そこで、カリウムセシウム、カルシウムがストロンチウムに似ているなら、前もってカリウムやカルシウムの必要量をとっておけば、仮にセシウムストロンチウムがやってきても、からだを通り過ぎるだけで、内部にとどまらない。内部被ばくが防げるのではないか、という説がある。
いまからでも遅くはないが、カリウムやカルシウムをしっかりとっておくことだ。
ただし、カリウムはとりすぎると害がある。腎臓の機能がよくない人はカリウムをとりすぎると、腎臓でカリウムの排出がうまくいかないために、血液中にカリウムがふえてしまい、高カリウム血症から不整脈を起こし、そのために心停止になることもある。
カルシウムはとりすぎても骨に蓄積され、腸から吸収されずに排出されてしまうので問題はないようだ。
1日にどれくらいのカリウム、カルシウムをとったほうがいいのかというと、カリウムは男性で2000mg、女性で1600mg。厚生労働省の調査では、この値はクリアしている。
カルシウムは1日600mgで、これも同じ調査によると550mgで少し足りない。
放射性物質をとりこまないようにするのは、どのくらいの量をとったほうがいいのかということはまだわかっていない。
少なくとも1日の必要量はとったほうがいいだろう。
カリウムは、ホウレンソウ、ジャガイモ、これから出回ってくる夏野菜に多い。スイカやメロンにも豊富。
カルシウムは牛乳だろう。牛乳が飲めない人はヨーグルトがいい。
もうひとつ、カリウム、カルシウムがバランスよく含まれているのが、豆腐、納豆などの大豆製品。前回紹介したみそも大豆食品。
野菜、大豆食品など、日本古来の食生活がいいようだ。