ちょっと前回とダブりますが

以前、東日本大震災が起き、原発が爆発して問題になったとき、NHKでノーベル賞化学賞を受賞した野依良治さんが、「科学と技術は違う」という話をされていました。
科学は真実を見つけようとするから、思いがけないことにもたくさんぶつかります。しかし、科学から生まれた技術は人がつくったものだから、「想定外」などということはあってはなりません。
危険性と利益のバランスをきちんと判断して、選択し、管理・運営しているはず。
だから、地震津波は自然災害かもしれないが、原発事故は人災であるといっていました。
そして、加えて原子力自体は人間の力をはるかに超えたもので、そこから生まれた技術も完全ではない。コントロールできなければ、使わないほうがいい。
原子力発電は、次世代の発電のつなぎのものと考えたほうがいいということでした。
わたしも、科学として原子力を研究することは必要だと思っています。それはどうすればコントロールできるかだけでなく、もっと重要なこと、真実を見つけるために必要です。
ところで、今回の震災を機に、科学の信頼性(科学者の信頼性)が失われたような気がしますが、
しかし、あくまでも科学と技術は別のものです。
このことをきちんと考える必要があります。


先日、大学の研究者にあって、あいまいなもの、オカルト的なものを研究対象にして、論文を書いても絶対に認められませんよといわれました。
事実をきちんと踏まえ、そこから導き出される結果について、検証を重ね、論文は書かなければいけません。
しかし、医学の世界でいえば、研究と臨床では違います、と加えていました。
臨床では、思いがけないことも起こります。まさに想定外ということがあってもおかしくありません。
人は自然のものですから。
しかし、それを科学的に検証していく必要があります。
誰もが納得いく結果になれば、論文として認められるでしょう。
じつは、健康雑誌の編集者だったときに、心療内科(当時は心身医学といっていました)を創設した九州大学の池見酉次郎先生を取材しました。
そのとき、患者の「こころ」に向き合うことで、いままでまったく治らなかった病気が改善に向かう現場に立ち会って、ライターがまるで「魔法」のようだと表現したときに、池見先生から、『医学、科学には魔法はありません』と強くいわれました。
この場合、野依先生流にいえば、医療技術には魔法はないということですね。


健康食品について調べていくと、いちばん気になるのはどのくらい効果があるかということです。
その効果を調べるには、公開されている情報を丹念に調べていくしかない。
公開されている情報は、メーカーのホームページで調べる方法もあるが、それは自画自賛の可能性があります。
そこで、論文になっているものを探すことにしました。論文は、さまざまな学会から発表されているが、それぞれの学会には論文審査の基準があり、査読といわれる専門家によるチェックが行われています。こうした客観的な評価があって、論文として掲載されていきます。
そこで、健康食品の効果を調べるために、論文検索という方法をとった。
論文検索サイト(有料)から、関係する論文を拾い集め、見ていった。プリントしたものは、机上に重ねると20センチ以上の厚さになったでしょうか。
内容は、専門用語は多く、噛みくだくのには苦労したが、いろいろなことがわかった。
さらに、わたしがひとりで行う論文検索には、限界があるので、国立栄養研のデータベースに当たってみました。
わたしのスタンスはいいものがあれば、紹介したいというものです。悪くいうよりもいいものを評価したい。
その成果が『民間療法のウソとホント


かつて、論文検索ができなかったとき、学会にこまめに顔を出し、発表を聞いたり、学会誌を購入したり、学会に行けない場合は医学部系の大学の図書館で調べたりした。親しくさせていただいた先生から入館章を拝借して。
いまは、インターネットを駆使して、日本だけでなく、海外の論文も検索できるようになってきた。
東日本大震災が起きたとき、日本の論文検索サイトも海外のサイトも、有料のところが災害関係者には無料になった。
最新の情報を得るにも、いまや論文サイトは欠かせないものになってきている。