QOLも自分で

QOLという言葉を聞いたことがあるでしょう。
クオリティー・オブ・ライフの略です。
「人生の質」という意味になりますが、これではよくわかりません。
医学的には、患者さんの人生をどのように考えるかということです。
だいぶ昔の話になりますが、わたしが高校生の頃、友人が心臓病になり、当時最も進んでいるという手術を受けました。
手術は成功しましたが、友人は亡くなりました。
そのとき医師は、「彼には生きる力がなかった」といいました。
治療が中心で患者のことを考えるのは二の次でした。
しかも、いまと違って、患者が医師を訴えるというようなことはまったく考えられません。
なぜ亡くなるように事態になったのかを知らされることもなく、患者は黙っているしかありませんでした。いまから50年以上も前の話です。
時代が変わり、医療も治すだけが目的ではなく、支えることが重要だといわれてきています。
たとえば、患者が毎日を快適に過ごせない状態とは、痛みがある、眠れない、便秘で苦しい、かゆみがあるといった症状もあります。
これには、痛み止め、睡眠剤、便秘薬、かゆみどめなどの解消法がありますが、不安感がある、いいようのない倦怠感がある、しびれがあるといった、症状とはいえないものもあります。
医療として、残念ながら対応できないものもあります。
原因がわかれば対処の方法もありますが、見つからなければ、そうした症状と折り合っていくしかありません。
なんとか折り合って日常を送っていくことになります。
いい状態とはいえないかもしれませんが、QOLは保たれています。病気とはそうしたものです。
ところで、病状が進行して行くと、新たな治療が提案されます。
がんなどの場合、第一選択が手術だとすると、放射線治療抗がん剤治療が次の治療として提案されます。放射線治療にも副作用はありますが、わたしが受けたものでいえば、それほどのことはありせんでした。
抗がん剤はどうでしょう。
ご存じのように、抗がん剤はがん細胞だけでなく、正常な細胞の働きを阻害します。
QOLを著しく損なう恐れがあります。
もちろん、防ぐ方法がありますが、感染症にかかりやすくなる、吐き気、嘔吐、下痢、便秘などなど、日常生活を送るうえで障害となることがたくさんあります。
抗がん剤の効果を否定するわけではありません。
しかし、自分のQOLを重視すれば、抗がん剤を進んで受けようという気にはなかなかなりません。
いま治療法を患者は選択する時代になりました。
こうした患者の気持ちを汲んでくれ、素直に話し合える関係が大切になります。