歯、歯、歯、歯、歯、歯、歯

 また、歯の話。歯がいったい何本あるか、ご存じだろうか。
 全部で28本。これに親知らずが加わると32本。
 歯、歯、歯…と7つ書いたのは、専門家は前から奥にかけて、1〜7番と番号をふっていくからだ。右の上の歯で奥から2番目なら、上あごの右の6番というように。
 番号は少々味気ないので、歯も一本一本きちんと名前を付けてやりたい。歯に名前を付けたら、愛情もわくと思うのだが。
 ところで、わたしの上あごの右の6番はいない。根が残っているのだが、歯の上の部分はない。破折という事態になったのである。破折は、歯の骨折のようなもので、歯にひびが入った状態である。ひびからむし歯菌が入り、むし歯になってしまった。破折になったときの記憶はない。右側の上の歯に何か違和感があるな、という程度。それこそ痛くもかゆくもなかったので、ほうっておいたのだが、何ともいえない違和感が続き、これはおかしいと、近くの歯医者に行ったら、破折していたのである。
 破折すると、その隙間からむし歯菌が入り込んでむし歯になることが多い。歯の根元がむし歯になると、歯を支えている歯槽骨が溶け出し、歯周病になることもある。歯周病が進行すると、周囲の歯にも影響が出て、破折した以外の歯が抜ける場合もある。破折は抜歯である。
 歯がいいことがわたしの取り柄だったので、歯を抜くのはショックだった。ひびの入ったところに接着剤を入れてくっつかないでしょうか、と尋ねたところ、接着剤でくっつけるのはむずかしいし、すぐにはがれてしまうのだそうだ。
 しかたなく抜くことにした。抜いたあとはブリッヂを架ける。ブリッヂの橋桁となるのは両側の歯。この歯を削ってクラウンをかぶせて橋桁にするのだが、どうしても抜きたくないといったら、破折した歯を調べてくれ、一部の根が活かせることになった。この根に歯を乗せて、ブリッヂの橋桁も一本にしてくれた。
 それにしてもまったく健康な歯を削られるのは、何ともいやだった。仕事で親しくなった歯科医にあとで聞いたのだが、クラスプというフックのようなものをつけてひっかける方法で、ブリッヂをつくれば、削らなくてすんだようだ。
 もっと早く知っていれば、と後悔した。まあ、破折のおかげで歯に強く興味を持ったのだから、よしとするか。