生老病死

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 先日、義父が来宅した。東京の自宅から八ヶ岳まで鈍行に乗ってやってくる。もうすぐ94歳になる。山の絵を描きにくる。ひとりで荷物を背負い、やってくる。仕事場から、上の道から降りてくる父を見ていた。
 ずいぶんと年をとり、ゆっくりゆっくり降りてくる。すべての動作が緩慢になっている。かつて企業人として、何人もの部下を率い、さまざまな決断をしていたころの面影はない。
 まだ、80歳代は、日常生活もそれほど不自由な印象を持たなかったが、90歳を超えて衰えが顕著になってきた。
 娘が3人いて、わたしのカミサンは、かなり冷静に父を見ている。衰えも十分に認めている。ほかのふたりには、義父の衰えを見えていないのだろうか。父を敬うあまり、衰えを認めたくないし、見えてもいないのではないか、とカミサンはいう。
 人は誰でも年をとる。衰えていく。できないことがふえてくる。体をコントロールできなくなる。
 人は衰えるもの、人は老いるもの、そして、人は死ぬもの、そんなことを実感させる。