ジェネリック医薬品を使うために

 ジェネリック医薬品という名前をよく聞くようになりました
 ジェネリック医薬品というのは、薬を商品名ではなく、有効成分名、これを一般名といいますが、一般名でいうことからはじまりました。英語でいうと、ジェネリックネーム。薬を「一般名、つまり有効成分でいおう」というわけです。
 たとえば、アスピリンというのは有効成分名、バッファリンというのは薬の名前。有効成分であるアスピリンと呼ぼうというわけです。
 薬にそれぞれ有効成分があります。薬の名前でなく、有効成分でいえば、その有効成分がある薬ならどれでもいいわけです。薬を選ぶ基準が有効成分になったのです。ヨーロッパでは、医師の書く処方箋が、すべて有効成分で、薬局で薬剤師が患者さんと相談しながら薬を決めていくと聞きました。日本でも有効成分を含んでいる薬の中から選ぶことができるようになったのです。
 薬の開発には膨大なお金がかかります。開発された薬には特許があります。特許期間がある間は、同じ薬をほかのメーカーはつくることができません。しかし、特許が切れれば、同じ薬をつくっても特許にふれないので、いろいろなメーカーから薬がぞろぞろつくられます。「ぞろ薬」などといわれていました。
 薬の開発には、薬の安全性、薬の効果がどのくらいあるのか、年齢や性別によって効果に違いはでないか、薬がどのように吸収されていくのか、効果はどのように現れるのか、どのように代謝されて排泄されるか、さまざまな実験を行います。
 こうした膨大な検査をくり返して薬は生まれるわけです。
ジェネリック医薬品も検査がいらないというわけではありません。有効性、安全性に関しては試験をしなくてもいいのですが、その薬が安定して効果を発揮するか、たとえば血液中の薬の濃度がどのように変わっていくかなどの検査をする必要があります。わかりやすくいえば、薬がからだの必要部分にきちんと届いているかをチェックするわけです。これができていれば問題はありません。
 ジェネリック医薬品には、こうしたデータがあるはずです。値段が安くなるから、ジェネリック医薬品にしようとするときに、こうしたデータを薬剤師にいって求めるといいですね。

 サンロード長坂店の薬剤師、伊藤厚さんに聞いてみました。
この4月から、医師が処方箋に、ジェネリック医薬品への変更を認めない場合に限ってサインをするようになったのです。原則、ジェネリック医薬品を使っていこうというわけです。この薬を使ってくださいと指示がなければ、患者さんと薬剤師が相談して、ジェネリック医薬品を使えることになりました。以前も使えたのですが、ジェネリック医薬品を使ったという報告を医師にしなければならなかったのです。その報告義務がなくなったのです。
しかし、ジェネリック医薬品を使おうという患者さんはまだまだ少ないようです。伊藤さんはいままでジェネリック医薬品を使ってトラブルになったことはないそうです。
 ジェネリック医薬品を使ってもらうには、なにしろ薬剤師と相談する必要があります。
 ここで薬剤師とはどんな仕事なのか、ご紹介しておきます。
 薬師如来というように、薬と医師は切りはなされないものです。しかし、ヨーロッパで1240年頃、神聖ローマ皇帝のフリードリヒ2世によって、医師が調剤することを禁止されました。暗殺を防ぐことが目的だったらしいのですが。処方する人と調合する人が同じ人だと、その処方をチェックする人がいないことになります。もし、処方箋が誤っていたらたいへんです。
 医薬分業は、世界的に認められているのです。じつは日本でも、近代医療がスタートしたときから、医薬分業だったのですが、薬剤師の不足から医師の調合を認めざるを得なかったのです。それがいまでも続いています。わたしたち、医者も含め、こうした医薬分業の背景について知らなかったといってもいいでしょう。医療費の高騰などもあって医薬分業が進み、ようやく50%に達したといいます。
 薬剤師法によって、患者又は現にその看護に当たつている者が特にその医師又は歯科医師から薬剤の交付を受けることを希望する旨を申し出た場合には、薬を調合できるのですが、患者の側が希望したわけでもないのに、ずっと調合してきたのです。本当は患者が希望していないのに調合しているとするとこれは違法ですね。
 薬剤師になるには、大学の薬学部6年制を卒業し、国家試験を通らなければなりません。日本全国に薬剤師の数は25万人。専門職も生まれています。がん専門薬剤師、抗がん剤の専門知識を持った薬剤師です。抗がん剤を多種ありますし、日進月歩の世界です。また、患者さんの症状の変化に対応して薬を頻繁に変える必要があります。
感染制御専門薬剤師という職もあります。感染症を専門に扱いわけです。感染症もそれこそ世界各地で新しい病気が生まれています。それらの病気に対処するには専門的な知識が必要です。アガサ・クリスティは薬剤師でした。その他著名人では、作家の横溝正史さん、俳優の野村昭子さん、ジャーナリストの本田勝一さん、歌手のけつめいしなど。

 わたしのカミさんが薬疹になったことがあります。鼻風邪がなかなか治らなくて、耳鼻咽喉科に行ったのですが、そこで処方された薬を飲んだときに、全身に真っ赤な発疹が出て、ぷつぷつと小さなふくらみができて、びっくりしました。東京にいたときは、カゼをひいたら耳鼻咽喉科に行っていました。おばあちゃん先生で、ちょっと昔流のやり方だったのですが、それが実によく効きました。薬も先生が調合していました。体重を確かめて、それこそ乳鉢ですった粉薬と錠剤で、それについてきちんと説明してくれました。薬はわたしたちのほうで頼んでいました。鼻風邪の薬はいろいろ知っていたのですが、そのとき処方された薬がほとんどがはじめてでした。その中のアレルギーを抑える薬が原因だと思います。
 じつは、先ほどの伊藤さんにもこの話をしたのですが、そのときに薬をもらった薬局では、あまり説明をしなかったようです。
 わたしたちは、諏訪の病院で診てもらっているのです。そこで、処方箋はもらってきますが、伊藤さんのところで調合してもらいます。彼が疑問に思ったら医師に尋ねていますし、あるときに錠剤をパチンパチンと割っているのです。何をしているのと聞くと、ある薬の半量を調合しろとなっている。すでに半量になっている錠剤もあるのですが、指示ですからといっていました。ちょっと聞いたらしいのですが、それでしてくださいといわれたようです。
 こんなことがきっかけで知り合いになったのですが、薬に関してはわからないと彼に聞きます。大衆薬にもくわしいし、よく相談にのってくれます。
 彼がわたしたちのかかりつけの薬剤師さんです。カミさんの薬疹のことも知っていますから、今度耳鼻科の処方箋をもらったら、彼に調合してもらおうと思っています。疑問に思ったらすぐに医師に聞いてくれますから。
 伊藤さんも、薬をできるだけ一箇所の薬局でもらうようにすると、重複も防ぐことができるからいいですね、といいます。新潟中越地震のときに、震災に遭われた人が日ごろからどんな薬を飲んでいたかが、お薬手帳からわかり、とてもよかったという話も彼から聞きました。
 家族はもちろんですが、第三者がどんな薬を飲んでいたことを知ることが大切です。もちろん本人も知っておく必要がありますが、救急のときはあわててしまいますから、ふだんから知っておくことが大切です。

 胃潰瘍の特効薬。H2ブロッカーという薬があります。いままで医師の処方箋がなければ出せなかったのですが、薬局で売られている大衆薬になりました。H2ブロッカー以外にも、最近はテレビで医療用に使われていました、とよく聞きますが、これらはスイッチOTCといわれる薬で、筋肉痛や関節痛の薬として「インドメタシン」カゼ薬に使われている「イブプロフェン」などがそうです。
 これらの薬は通常の市販の薬よりよく効きます。それだけ強い成分が含まれているというわけです。ですから、こうした薬を飲んで効果が出なかった場合、続けて飲むのではなく、薬剤師に相談したほうがいいです。
 薬は、当然ですが効果があるようにできています。飲んでみて効果がないようなら引き続けて飲むのはやめたほうがいいと思います。
 そもそも薬とは、薬事法は他の商品と区別して『薬』−正確には医薬品といいます−を特別に規定します。医薬品はからだに効く(有効性)ことと危険度が少ない(安全性)ことについて、国(厚生労働省)が保証しています。当然そのためには証拠となる提出された研究結果について審査があり、製造販売後も調査報告する義務が課せられています。
 医薬品以外の商品、たとえばサプリメントや健康食品についてはこのような規定はありません。規制がまったくないわけではありませんが、医薬品とは違います。
 医薬品以外のサプリメントや健康食品は効かないのかというとそうとはいえません。薬事法は医薬品以外の商品について、効果をうたって販売することを禁じていますから、それを行えば薬事法違反になりますが。
 日本で売られている薬は、医師が処方する薬が90%で、いわゆる大衆薬は10%ぐらいだそうです。この割合は特別で、欧米では大衆薬の割合がかなり多いと聞きました。
 薬事情もずいぶん違うものです。