桜が散りゆく

 わが家の山桜は、この連休前に咲きはじめた。
 山桜だから、葉といっしょにほころびはじめる。しかも、花は木の上のほうで咲いている。
 いつも咲くのは、連休のあと。遊びにきていた人たちが帰り、静けさを取り戻したころに咲く。
 だから、わたしたちも桜を十分に楽しむことができる。
 今年はそれが早くなった。

 友人たちに声をかけ、花見をした。
 少し広くなったベランダにテーブルや椅子を並べ、あり合わせのものを肴にワインを飲む。
 そこへ、桜の花びらが散りかかり、何とも風情がある。

 そんな暖かい日が過ぎ、一気に寒さがぶり返してきた。
 今年最後と決め、薪ストーブを焚く。残り少なくなった薪を燃やすと、ゆるやかな暖かさが部屋中に広がり、ほっとする。
 
 義父にわが家の桜を見せてあげたかった。
 昨年は、義父のアトリエをつくっている最中、ちょうど土台ができあがった段階で、桜を楽しむという環境ではなかった。
 義父自身も桜が見たいといっていたが、叶わなかった。
 それもよしとしよう。

 桜は来年も咲くだろう。

 わたしは、あと何年桜を見ることができるだろうか。