幸せは感染する

1. 60年以上にわたり、5000人の住民を健康調査
フラミンガム・スタディという有名な疫学調査があります。疫学調査とは、ある人の集団(同じ環境に住んでいる人だったり、同じ職業の人だったり)を一定期間、特定の目的を持って調査することです。
アメリカのマサチューセッツ州ボストン郊外にフラミンガムという小さな町があります。その住民約5000人を対象に1948年から2年ごとに健康調査をして、主に心臓病ですが、どんな人がなりやすいか、反対になりにくいかを調べています。
フラミンガム・スタディからわかったことは、心臓病には、高血圧が大いに関係していること。そのほか、脂質代謝異常(高コレステロール血症など)、喫煙、糖尿病、肥満などが危険因子になっていることがわかりました。これは心臓病の危険因子として、非常に注目されました。
この調査は、現在でも行われ、その対象は調査当時の住民はもちろん、子ども、さらに孫にまで及んでいます。同じところ(環境)に住んでいる住民全体を長期間にわたって調査しているので、信頼性の高いものとなっています。
日本でも、福岡県の久山町の住民の健康状態を調べているものが有名です。1961年から九州大学が行っています。久山町の人口、約7000人を対象に、住民の8割を対象に定期的に検診を行って記録し、さらに亡くなった人の8割を解剖して病変を確認しています。そろそろ40年にわたります。日本でこれだけ長くひとつの地域住民を調査しているものはないでしょう。
日本の場合は脳卒中について、くわしく調べています。どんな人がなりやすいか、なりにくいか。やはり高血圧が問題でした。そのほか、認知症に関する調査も進んでいます。
こうした地道な調査はたいへん必要です。

2. 幸せのおすそわけ
幸せのおすそわけ、という言葉があります。結婚式のフィナーレで花嫁が参列してくれた人へブーケを投げるのも、幸せのおすそわけです。
おすそわけは別のいい方で、おふくわけともいいます。お福分け、こちらの言葉のほうがいいですね。
じつは、おすそわけは実際に起こるのです。それがフラミンガム・スタディでわかりました。
そもそも幸福は人によって違うものです。何を持って幸福と感じるか。
まさに人それぞれですが、研究では、
「将来に希望がある」
「自分は幸せだ」
「人生をエンジョイしている」
「自分はほかの人と同じくらい幸せと感じる」
という項目に対して、
1、 まったくないかごくまれに感じる(前記の幸福感を週に1日も感じない)
2、 たまには感じる(週に1〜2日は感じる)
3、 ときどき感じる(週に3〜4日は感じる)
4、 よく感じる(週に5〜7日感じる。これはほぼ毎日ということです)
という頻度でチェックしました。
そして、幸せをよく感じるという人を地図上で印していくと、かたまりになっていることがわかりました。一方、不幸な人もかたまりになっていました。
幸せと感じている人のまわりには、同じように幸せと思っている人がいて、それがかたまりをつくっていました。一方で、不幸な人もかたまりになっていたのも興味深い。
この幸せ研究では、幸せが幸せを呼ぶといっています。その範囲は「友だちの友だちの友だち」まで、3段階まで広がることを示唆しています。
幸せが伝播することがわかったのです。
そして、これも興味深いのですが、幸せな人に囲まれていると将来幸せになることもわかりました。
あなたのまわりの人間関係を観察してみてください。常に前向きで明るい人と、些細なことにこだわり、暗くものを考える人がいるはずです。
明るい人のまわりには明るい人が集まり、暗い人は暗い人たちで集まるような傾向はありませんか。
幸福も伝播しますが、不幸も伝播するのです。
しかし、もともと幸不幸は人の気持ちのありようで、決まるものです。なにごとにも前向きに取り組むことができるかどうかは、その人の気持ちの持ちようではないでしょうか。
ですから、伝播するといえるかもしれません。
自ら幸福の扉をあけるか、それとも不幸の扉を開けてしまうか。それはあなた次第といえます。
幸福の広がりは、同じように幸福と思える人の間に広がっていきます。
いい方を変えると幸福を受けとめることができる人ではないでしょうか。日ごろから、幸せだなと思える人です。
自分を幸せだなと思えること、これが非常に重要です。

3. 自分の幸せを思い出してみよう
幸せ感覚です。自分は幸せと思うこと。
どんなときに幸せと感じたか、それを思い出してもいいでしょう。
あなたの人生で楽しかったこと、うれしいことです。
受験に成功したとき、結婚したとき、子どもが生まれたとき、家を建てた(買った)ときなど、別に人生の大きな出来事に限りません。
あのコンサートが楽しかった、あのテレビ番組が面白かった、食べた料理がおいしかった、楽しい旅行だった、前からほしかったものが手に入った、といった身近なことでもかまいません。
こうしたうれしいことを書き出しておいて、しょっちゅう見ることもいいですね。
笑う門に福来るといいますが、よく笑うということも大切です。
それがむずかしいという人は、明るく、幸せな人の近くに行きましょう。暗く、マイナスの方向に考える人にはできるだけ近づかないようにすればいいのです。
明るく考えられない人でも、明るい人と付き合っているうちに、明るさが移ってくるものです。
幸福の伝播を距離で測ってみると、隣人が幸福な人の場合は34パーセント、1マイル(1.6キロ)以内に幸福な人がいる場合は25パーセントだそうです。これは、簡単に会うことができる距離といってもいいでしょう。隣人なら、毎日顔を合わせますから。
あなた自身が幸せをたくさん感じることができれば、それがいちばんなのはいうまでもありません。
あなた自身もできるだけ「幸せのオーラ」を出すようにしてみましょう。