わたしたちの田んぼにいた「生きている化石」


田植えも終わり、いよいよ田の草取りがはじまりました。わたしが手伝っている友人の稲作は、完全無農薬やっています。
田の草取りをしていると、水田にさまざまな生き物を見ることができます。ミズスマシ、ミズカマキリゲンゴロウ、タニシなどの常連に加えて、この時期に現れるのが豊年エビやカブトエビです。豊作を暗示してくれる生き物です。これも農薬を使っていないからです。
カブトエビを紹介しましょう。
カブトエビの話を聞いたのが、山形県置賜地方を訪ねたときのことです。置賜地方で無農薬のもち米でおもちを生産している農家を取材したのですが、そのときに、「うちの田んぼにはカブトエビがいるんだ」という話を聞きました。
おもちをつくっているときですから、稲刈りはとっくにすんでいますので、カブトエビの実物を見ることはできませんでした。
カブトエビのいる田んぼといない田んぼがあって、水田に水を汲みいれている沢によって、いる田んぼといない田んぼがあるとのこと。沢の水に含まれている土が違うんだといっていました。


カブトエビは淡水にすむ生物ですが、海にいるカブトガニに形がよく似ています。ただし、大きさは2、3cmで、オタマジャクシのようです。
このカブトエビの別名は「田の草取り虫」。
雑食で、泥の中の小型の藻類、プランクトン、昆虫の遺体、植物などを捕食するのだそうです。エサをとるため、そして産卵のために、田んぼの水底の泥をかき混ぜるので、田の水が濁り、日光が水底に届くのを防いでくれます。日光が届かないので、雑草の発芽や成長がさまたげられ、その結果、田の草取り虫といわれます。


カブトエビは、田に水が入ると、3日から5日で土の中にいた卵がふ化をして、姿を現します。田の草取りをするのは、田に水が入って、5日以上たっていますから、カブトエビは見られるのです。
述べたように姿は小さいカブトガニです。ひっくり返してよく見ると、小さな足がたくさんついています。えら足といいます。この足が田の水底を掻きまわしているのです。


カブトエビは、『生きている化石』といわれています。ジュラ紀といわれる1億9500万年から1億3600万年前に、いまの形になり、それから進化をせずに生き続けています。カブトエビの卵は真冬でも土の中で生きることができます。低温、乾燥という悪条件の中でも生きることができるので、恐竜などと違って絶滅から逃れられたといわれています。そこで、『生きている化石』といわれています。


カブトエビが生きている化石といわれるもう一つの特徴があります。それは第三の目があることです。以前このブログでも紹介しましたが、わたしたちも第三の目を持っています。ただし、わたしたちの第三の目は進化の過程で脳の奥深く入り込み、松果体という小さな器官となり、光を感じるセンサーで睡眠と大いに関係しています。
第三の目をそのまま成体になっても持ち続けていることも生きている化石といわれる所以です。
ちなみに、カブトエビは、甲殻類カブトエビという名称がついていますが、エビ類ではありません。
写真はわたしたちの田んぼにいたカブトエビです。

近著『歯は磨くだけでいいのか』もよろしくお願いします。