わかりません好きな言葉のひとつです

梅雨にすっぽりつつまれ、毎日なんとなく気がはれません。
こんなときに、読みたくなるのが俳句や川柳の句集です。俳句は季語や「〜かな」、「〜けり」といった切れ字がありますが、川柳は季語も切れ字にもこだわりません。
わたしは、俳句も川柳もどちらも好きですが、ひょんなことから知り合いになった川柳作家倉本朝世さんから、楽しい写真付きの句集を少し前にいただきました。
『カーブ』と題された句集を2011年、同じく『大阪の泡』を2012年にいただきました。ともに、徳永政二さんのものです。句集といって句が並んでいるだけではありません。藤田めぐみさんの写真が句についているのですが、この写真もなかなかいい。このフォト句集は連作になるようですが、とてもいいので一部を紹介したいと思います。

『カーブ』の中の

悲しみはつながっているカーブする

という句は、2011年、東日本大震災のあった年ですが、いちばん心に残る句として、『増殖する俳句歳時記』で紹介されています。

わたしは、

よかったねよかった帽子ぬぎながら

わかりません好きな言葉のひとつです

やわらかいタオルひとりというものよ

などの句が好きです。
ゆっくり味わうようにつぶやいてみると、これらの句は、わたしのこころにスーっと落ちていきます。
川柳は、俳句と違って言葉が素直ですから、自分に語りかけてもくるし、人に語りかけているようでもあります。


『大阪の泡』では、

おおかたの過ぎてしまっている男

そうですねそれは涙に近いもの

まっすぐはあかんやっぱりおもろない

つり革をにぎりなんでやねんと言う

ある年齢になると、人生のおおかたのことは終わっています。余生などいうわけですが、
おおかたの句は、そんな自分を詠んだのか、それともすれ違った人を詠んだのか、どちらも実感できます。
最近、涙もろくなってきていますが、涙なのか、いや涙ではなく、それに近いものかもしれないと思うとなぜかホッとします。

そんなわけで、今回は川柳を紹介しました。

わたしの本『歯は磨くだけでいいのか』もぜひお読みください。
しっかり歯を守って楽しい人生を