健康の基準値の変更はそんな簡単なことではない

先日、日本人間ドック学会健康保険組合連合会は、健康診断や人間ドック「異常なし」としていた判定を緩めると発表した(4月4日付朝日新聞)。
そのことに少し反論をしたが、日本人間ドック学会が4月7日付で、「異常なし」判定基準を緩めるという発表をしたが、
「単年度の結果であり、今後数年間にさらにデータ追跡調査をして結論を出していくことになります」
という断り、エキスキューズを出している。

かつて、日本人間ドック学会を取材したことがあるのだが、人間ドックの目的は何かというと、からだを調べておいて、病気の予防することだという。人間ドックでは、ふつうの健康診断と違って、検査内容も多く、それだけしっかりからだを調べ、検査結果からかかりそうな病気を予測して、予防をしていこうというわけだ。
医学には、治療医学だけでなく予防医学という分野がある。病気を治す治療医学はずいぶん進んできたが、予防医学はまだまだという状態。予防医学はたいへん重要だと思う。病気にかかってからあわてて診てもらうより、予防ができればそれに越したことはない。

一方で、検査をすることで「病気をつくる」こともあるわけで、それをどのように防ぐかが課題だといっていました。「病気をつくる」とは、基準値(正常値といってもいい)を厳しくして、まだまだ大丈夫をちょっと怪しいと判定し、薬などを処方してしまうことだ。
じつは、今回の発表は、そうした考えの一環だと思う。
しかし、この反響はけっこうすごいものだったようで、人間ドック学会も、健康の基準はすぐに改めるということではなく、これからさらにデータを収集し、追跡調査をしていくと発表している。

この基準値に関する「断り」の報道はどのくらいきちんとされただろうか。
基準値が緩んだ、これでわたしは健康だ、もう薬も飲む必要がない、と思った人も多いはず。
それに、発表した側が「待った」とかけたのである。
こうしたことがもっと報道されないといけない。