健康寿命の謎

健康寿命という考え方は、たいへん重要だと思っている。
いままで平均寿命が話題になってきた。
ご存じの方もいると思うが、平均寿命は今年生まれた赤ちゃんがどのくらい生きることができるだろうかという統計的な数値である。
平均寿命は、その人の健康状態がどのようなものであるかは関係がない。
寝たきりであっても、重い病気にかかっていたとしても、死なない限り寿命の中にカウントされる。
そして、あくまでも統計的な数値であり、すべての人(赤ちゃん)が平均寿命まで生きられるというわけでもない。


健康寿命は、人が健康でいられる期間とされている。
ならば、健康寿命を延ばすことが、平均寿命にも影響が出てくるのではないだろうかと考えた。
ところが、健康寿命の長い県が平均寿命が長い県とは限らない。


ここに、健康寿命の謎がある。


健康寿命を算定する基準を挙げておこう。以下のような質問が行われる。
1あなたは現在健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか
  はい
  いいえ
2どのような影響がありますか
  ・日常生活動作
  ・外出
  ・仕事、家事、学業
  ・運動
  ・その他
    あてはまるものはすべてに〇をつける
3あなたの現在の状態はいかがですか
  よい まあよい ふつう
  あまりよくない よくない
4介護認定を受けているか


1、2,3は質問に回答する(アンケート)。
1の質問に「はい」と答えた人が健康でないと思われ、さらに2の質問に答えていく。「はい」の内容の確認と思われる。
3は、「よい、まあよい、ふつう」と答えた人は健康と判断される。
「あまりよくない、よくない」と答えた人は健康でないとカウントされる。
これらの質問の回答は、すべて個人の主観によるもの。
つまり、自分のことをどのようにとらえているかが基準になる。
仮に病気を持っていたとしても、日常生活に支障はないし、健康であると自覚していれば、健康の範囲になる。
たとえば、わたしのように腹膜透析を受けていても、日常生活に支障がないと思えば、健康を保持しているという理屈になる。
果たしてわたしは健康だろうか。
多少血圧が高くても、糖尿病といわれていても、自分は健康だと思っていれば、健康の範囲におさまっていく。


4の介護認定を受けているかどうかだが、介護認定をするのは地方自治体である。
介護認定を積極的に行う(?)自治体に属していれば、健康ではないという人がふえる。
反対に介護認定が厳しい自治体にいれば、健康な人が多くなる。


健康寿命が話題になってきているのは、高齢者の医療にお金がかかる、介護費用の増大によって介護保険が成り立たなくなってきているなどという背景がある。


健康であるにこしたことはないが、病気があることが悪いことのように思われる風潮には納得がいかない。