簡単な足し算

 NHKスペシャルで、認知症のお年寄りに、6+3、4+3、2+7のような簡単な計算と昔話を音読してもらったところ、認知症で日常生活を助けなしにはおくれなかった高齢者が、すすんで食事をするようになったり、挨拶を交わすようになったりするという特集をしていた。
 それを見ていて気づいたのだが、オーストラリアの原住民アボリジニは、数字は10までしか数えず、それ以上は「いっぱい」と表現する。しかし、砂漠にある水の出るところにはすべて名前が付いているという。
 砂漠に住む彼らにとって、水は命をはぐくむ重要なものであるが、数は10ぐらいまで知っていれば生きていけることを表している。
 わたしたちも数をたくさん知っているが、それは生活の助けにはならない。しかし、少なくとも10ぐらいまでの数は駆使できないと生きていけない。認知症であっても生きることを再確認させてくれたのが、10までの数ではなかったのではないだろうか。
 それを知らないと生きていけない。数を数えることで、生きる力が元気づけられたのかしれない。事実、脳の前頭前野というところは、簡単な計算で活発になるが、わり算やかけ算など複雑に入り組んだ計算では、あまり働かなかった。
 わたしも20以上の数を数えるのが苦手です。