右、左

 人間ドッグを信用していなかったのだが、当時勤めていた会社で、どうしても受けてほしいといわれ、これも経験だと思って行ってみた。
 中性脂肪が高いので高脂血症に注意してください、十二指腸潰瘍の瘢痕(治った跡)がありますね、再発するかもしれません、胆石がありますから、脂っこいもを控えてくださいなどといわれると思っていた。自覚している症状から、考えられる病気については、それなりに知識は持っていたし、注意もしている。長年健康雑誌の編集をし、記事もけっこう書いてきたから、知識はあった。
 ところが、診断は思いもよらないものだった。
 片方の腎臓が萎縮しているといわれた。そういえば、腎臓、膀胱の超音波検査で、右を向いてください、左を向いてください、ちょっとうつぶせになってくれますか、と撮影にずいぶん時間がかかった。腎臓が映らないために、検査をしていた女性がわたしの体をいろいろな角度から調べようとしていたのだ。
 その結果、右の腎臓が萎縮していることがわかったのである。
 自覚症状はまったくなかった。尿にたんぱくが出ることがあったが、そのときには、疲れでしょうとしかいわれなかったから、気にしていなかった。
 ところが、病状は進行していた。以前このブログでも書いたが、わたしの腎臓の病気には治療法はない。多少進行を遅らせる程度のことしかできない。
 しかし、腎臓の病気は発見されてよかったと思っている。
 それにしても、自覚症状は当てにならない。
 と思うが、健康診断、人間ドッグを信用してもいけない。その日、そのときの体の状態で、健康を確認するためのものだから。