こんな病院は見たことがなかった

 我が家から、八ヶ岳高原道路を西に行き、途中から茅野の市街に下りていく。茅野の町に入る手前、小高い丘のようなところにその病院はある。八ヶ岳高原道路、通称鉢巻き道路、八ヶ岳をまるで鉢巻きがまいているように通っているので、この名前がある。冬は凍結し、スタッドレスタイヤでも危ないが、春は新緑、秋は紅葉がすばらしい道路である。
 その道路を経て、約40分ほど病院に着く。近くに住む芸術家が寄贈した絵や彫刻、書が廊下のあちこちに飾られ、居心地のいい病院である。
 絵画の力よりすごいのは、看護師をはじめとする医療スタッフたちである。みなが本当に気持ちよく働いている。地方の病院だから、患者の中にも知り合いが多いのだが、この間スーパーであったわね、また、合ったけど、病院じゃイヤだね、と看護士と患者が話している。
 順番を待っていると、お待たせしてすみません、あとふたりですから、もう少しお待ちください、と看護師がわざわざ患者のところにきていう。
 さすが、院長(現在は名誉院長)が全国的に知られた病院である。
 働いている人たちが明るいのが、なんといってもいい印象を与える。病院はすばらしかった。
 実は、この病院には取材にきたことがある。そのとき、電話で病院までの地図をくわしく説明をしてくれ、さらにお気をつけていらっしゃってください、といわれた。これには驚いた。
 こんなことをいわれたのは、いろいろ病院を取材しているが、はじめてだった。
 そんな好印象の病院だったが。