出会った医者は

 東京の医師から紹介されて、地方の病院へやってきた。病院は本当にいい病院だった。検査も当日受け、その結果も当日知らされる。東京の病院なら、診察日と別の日に検査のためにいき、結果も次の診察日まで待たなければならない。
 こうした不便もなく、明るい病院で、さて、どんな医師が登場するのだろう。
 取材慣れしていても、自分の体のことだし、緊張する。眼鏡をかけた小柄な医師だった。
 東京で受けてきた治療内容、検査データをすべて渡す。検査データはすぐにコピーをしていた。いますぐに腎臓が悪くなるわけではないこと、徐々に進行していくことなどをレクチャーされた。
 いちばん気になっている透析の時期だ。70歳ぐらいまでは保つといわれたのですが、と切り出すと、それはどうですか、60歳を過ぎると一気に悪くなっていきます、という。
 対数のグラフのようなものを書いて、ご存じでしょう、という顔をする。
 そんなもの、知らないよ。60歳なんてもうすぐじゃないか。がーんと、頭を張られた感じ。
 薬は東京のものと同じで、検査を次の診察日に改めて受けることになった。
 わたしと伴走してくれるというような感じはサラサラなかった。
 やはり医者は医者なんだな。東京の先生は、医者の中でも変わった先生だったのだろう。