歩いて15分の圏内に

 東京は杉並の住宅街に住んでいたのだが、歩いて15分以内に、なんと15軒の開業医がいた。内科がいちばん多かったが、小児科、整形外科、皮膚科、形成外科、精神科など、総合病院ができるほど、いろいろな科がそろっていた。
 いまは、というと、歩いて15分以内に診療所ももちろんクリニックもない。村(市町村合併によって町になったが、状態は変わらない)には、診療所が一軒あるだけ。そこにいる医師の専門は精神科だという。月に何回かは、整形外科などの専門医が診療する日があるが、それにしてもこんな状態。
 町、わかりにくいので村にしておく。村の診療所に行くのも、車で10分はかかるだろう。10分なら近いと思うだろうが、車で森の中を10分走るのだが、歩くとなれば、1時間かな。まあ、下る一方だから、もう少し早いかもしれないが。
 友人にそんな話をしたら、離島状態ですね、小笠原だ、小笠原といわれたが、まさにその通り。無医村ではないが、離島に住んでいると同じ。
 住まいから村を経て、20分ほど下りると町に出る。そこには、開業医が4、5軒ある。その開業医たちはこんな状態。一軒は、インフルエンザのチェックもしないでタミフルをくれ、もう一軒も同じく検査もしないで、症状だけを聞いてノロウイルスだといったという。きちんと検査ぐらいしてくれ、そうしないと危ないよ。
 町にある総合病院がひどいという話はよく聞く。受付がまったく不親切で、患者のことなど考えていない。いまは業態が変わって少しよくなったらしいが、打ち身ですよ、といわれ、痛みがひどくなったのでよその病院で診てもらったら骨折していたとか、こんな話をよく聞く。
 地方では、医者は選べない。選んでいては、医者にかかれない。
 そんなことから、自分の体は自分で守らねば、思うようになった次第。