ある医師の独り言

 彼はいう。「患者さんに寄り添う姿勢を大切にすれば、開業するにしろ、病院の勤務医になるにしろ、『得』をするよ。都会にも、見えにくいけれど、村的な人と人のつながりや、その地域の特徴がある。街のご老人も、人生を歩んできた中で培った、さまざまな心象風景をお持ちだ。その見えない心象風景を君たちが大切にすれば、患者さんはやすらぐ。確実に受けがよくなる。開業したら、成功するさ」 
 小さな診療所(総合病院の1施設として機能している)にたくさんの医師が訪れる。彼らに、医師はこう語る。
 わたしは、医師にキュアではなく、ケアを目指してもらいたいと思う。
 根治のむずかしい病気に、多くの人がかかっている。日常生活を送りつつ、病気の進行をできるだけくいとめる。その手助けのひとりとなるのが医師である。専門的な知識を駆使しつつ、ケアを考えてもらいたい。