わかっちゃいるけど

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 いま朝日新聞で「患者を生きる」という連載コラムに、糖尿病の心のケアが取り上げられているが、糖尿病患者が医師の指導通りになかなか生活のコントロールができず、病院に行って医師に会うのが苦痛になると紹介されているが、そうだろうと思う。
 以前、漢方医に検査を受けてきたほしいと紹介された総合病院の腎臓内科の隣が糖尿病外来だった。
 カーテンだけで仕切られているから、隣の患者と医師の会話は筒抜け。医師はいう。
「夜食なんか食べていたら、目が見えなくなっちゃうよ。知らないからね」
 患者がつい誘惑に負けて、夜食をとったことを告白したのだろう。糖尿病患者にとって現代は、地獄だろう。お金があれば、24時間どこでも食べものが手に入るし、歩かなくていいようにエスカレーターやエレベーターがどこにもある。動く歩道も珍しくなくなった。
 そんな時代に、自分だけ節制し、運動をしなければならない。
 わかっちゃいるけど、やめられないという感情はよくわかる。それを脅かすのではなく、上手にコントロールするのはむずかしいだろう。通り一遍の指導では、できるはずがない。
 そこで、医師に頼らず、自分のことは自分ですると覚悟を決めなければならない。医師に恃まず、己に恃む、これしかない。患者の自覚が必要だ。
 でも、一方でそんな自分のことをわかってくれ、後押しをしてくれる人がほしい。それも患者である。家族の応援が欠かせない。