木の又年をご存じですか

[rakuten:book:12075392:detail]
 100歳まで生きる人が珍しくない時代がやってきたが、人は100歳という時間年齢を楽しむことができているだろうか。
 まだまだその方法を知らないような気がする。
 かつて、貧しい時代に、姨捨はよくあった。
 ある地方では、数え年の62歳を「木の又(また)年」と呼んでいたという。木の又を使って自死をする準備の年になったということだ。心構えであるが、自ら死を選ぶことが求められていた。
 長生きをすることが、喜ばしいことではなかった。
 こういう時代が実は長く続いていた。
 豊かになり、長寿を祝えるようになったのは、つい最近のこと。
 まだまだ人は豊かさを享受するまで至っていない気がする。