高齢者の医療

 75歳以上の高齢者を後期高齢者と呼んで、高齢者のなかでもとくに長生きしている人として考える。後期高齢者の病気の特徴は、死ぬような病気にかかる人は少なく、死なない病気にかかっていることだ。
 痴呆症であったり、骨粗鬆症であったり、尿失禁であったり、骨折であったり、これらはすぐに亡くなる病気ではない。死ねない病気といってもいい。
 こうした病気には、キュアではなく、ケアが必要になってくる。
 東京都老人総合研究所の白澤卓二先生は、「この年齢まで生きてこられた人は、心筋梗塞脳卒中といった死に至る病の山を越えてきた人」という。
 がんも発病しているが、いわば共存するように、がんそのもので死に至ることが少ない。
 後期高齢者の治療は、大きく変わる必要がある。ところが、いまの医療はそこに気づいていない。若い人と同じような治療をしようとすることに、患者の不幸があるようだ。