高齢者の医療3

むし歯・歯周病 もう歯で悩まない (ホーム・メディカ・ビジュアルブック)

むし歯・歯周病 もう歯で悩まない (ホーム・メディカ・ビジュアルブック)

 死を覚悟する。言葉でいうのは簡単だが、実際の場面ではどのようになるのだろう。
 こんな例がある。「足が痛い」と息子さんに連れられてきたお年寄り。93歳のおばあちゃん。足の動脈がつまり、壊死しかけていた。この症状はわたしの父と同じである。
 病院では、足の切断を勧められたが、おばあちゃんは家に帰りたいとやんわりと拒否した。「入院しないと死んじゃうぞ」と息子さんにいわれたが、「それなら、なおさらありがたい」といったそうだ。
 結局家に帰ってしまった。壊死は徐々に進み、最後は高熱が続いたが、痛みをとる処置だけを医師は行い、おばあちゃんは静かに息を引き取った。
 治療を望めない終末期の患者を診るとき、家族に「治療を望まれますか」と医師は聞くという。そこでは、医師と住民の意思がしっかりとつながっているからできるのだが。
 医療が中心ではなく、患者が中心なのだ。こういう死に方もある。
 最後の人生をどのように送るか。最後をどのように迎えるか。覚悟をする必要がある。