くも膜下出血に襲われたふたり

むし歯・歯周病 もう歯で悩まない (ホーム・メディカ・ビジュアルブック)

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 わたしの知り合いがくも膜下出血に襲われた。ひとつ年上。児童福祉関係の仕事をしていた。児童虐待がふえてきたいま、ものすごく忙しくしていたという。
 彼は常に子どもを救いたいと全力を尽くしていた。必ず助けに行くから、を合い言葉に出撃といって、児童虐待があると報告のあった家庭に、子どもを助けに行く。
 お巡りさんがいっしょに行ってくれるわけでもないから、ある意味に身に危険があるかもしれない。
 しかし、子どもを助けたい一心で、困難な状況にも身を挺していた。
 お酒もタバコも大好きで、よく飲んでいた。
 そんな彼がくも膜下出血に襲われた。かなりひどい状態で、意識もなく、脳死に近い状態だったらしい。
 医師が、人工呼吸器をつければ、もう少し長らえさせることができますと伝えた。
 奥さんと子どもふたりは、よく話し合い、人工呼吸器はつけないことにした。しばらくして彼は亡くなった。
 彼は人生をよく生き、もちろんもっと生きたかったに違いないが、満足して亡くなった。家族に最後の言葉は残せなかったが、生き方そのものが十分にそれを伝えていた。
 残された家族も納得がいったようだ。
 もうひとりは、直接は知らない。彼の前の奥さんが知り合い。離婚したあと、ひとりで生活をしていた。マンションで倒れているのを会社の同僚が発見し、病院に運んだ。
 身寄りがなく、前の奥さんであるわたしの知り合いに連絡がきた。子どもがひとりいた。
 くも膜下出血であることを告げられ、人工呼吸器をつけることを医師に勧められ、子どもがぜひともつけてほしいと願い、装着することになった。
 意識はない。人工呼吸器で生かされている状態である。この状態で生き続け、3ヵ月たち、病院を移らざるを得なくなり、2軒目の病院で人工呼吸器をはずした。自発呼吸ができるようになっていた。この間、彼女は一生懸命看護した。
 別れた夫なのにね、といいながら。
 しかし、彼も感染症にかかり、亡くなった。この間意識はまったく戻らなかった。
 彼を送り、わたしの知り合いである友だちは十分に満足した。別れた夫に、あれだけの看護を続けた彼女は、本当にえらいと思う。
 残された家族に満足がある。
 これが肝心なのだろう。