細胞の死などについて

 細胞の死。大きく分けて2つある。ひとつは外傷、傷が修復不能になり、生きられなくなった場合。もう一つは、細胞自身に問題が起きて、自ら死を選ぶ場合。前者をネクローシスという。後者はアポトーシスネクローシスは、当然のことだ。傷が治らなければ、機能も回復しないし、役に立たない。一方、アポトーシスは、プログラムされている。細胞自体に問題が起きる。たとえば、細胞ががんになったときには細胞自らアポトーシスを起こし、自滅する。こうしてがんになることを防いでいる。
 アポトーシスは、がん細胞のような細胞自体の変化にも対応しているが、あらかじめ決まった時期に決まった場所に起こるようにもプログラムもされている。これは生物の成長過程に見られる。ヒトの指は、最初はすべてくっついている。これがバラバラになっていくのは、指と指の間の細胞がアポトーシスしているからだ。
 これらの死に加えたいのが、動かない状態。死んではいないが機能を止めている。こんな状態がある。休眠している。ネクローシスでもアポトーシスでもない。休眠状態というのがある。
 ネクローシスアポトーシスもコントロールすることがむずかしい。しかし、休眠状態になるのはコントロールが可能ではないかと思う。
 SIR2遺伝子という長寿遺伝子がヒトもある。この遺伝子を発現させ、活性化させるのは、カロリー制限と運動が欠かせない。反対にいえば、カロリー制限や運動をしなければ、SIR2遺伝子は発現せず、長寿への道は開けない。つまり、この遺伝子は、普段は眠っているのではないか。
 遺伝子を起こすという発想で考えると、細胞死をまねく遺伝子は常に起きているのだろう。さもないと、わたしたちは生きていけないから。細胞を眠らせておく遺伝子は、わたしたちのDNAの中に必ずあるに違いない。それはまだ寝ている。こいつを起こしてみたい。どうすればできるか、まだわからないが。