ゲラのチェックをしつつ、企画を考える

 朝日新聞社より、11月7日発行になる本のゲラをチェックしている。自分の書いた原稿がゲラになってくると、少しイメージが違って感じる。
 今回の本は、長寿遺伝子がどのように発見されていったのか、ということを、本の出だしに使った。長寿遺伝子の発見の過程に、すでに長寿の秘密が隠されている。これを謎解きにふうにしようと思ったが、なかなかむずかしかった。
 分子生物学が、長寿遺伝子の発見にも重要な役割を果たしている。分子生物学の発展によって、いままで常識とされてきたことが、分子のレベルでみていくと、まったく違った様相を現す。これがおもしろいのだが、その内容に関して、どのくらい理解できたかというと、わたしのような文系の頭では、理解できないことのほうが多い。しかも、その世界の専門家たちは、理解できない言葉で語り合い、わたしにも説明してくる。わかったような顔をして、実はわかっていないという哀れな状態だった。
 何度も何度も資料を読み返して、ようやく理解したと思ったら、それを少し違います、といわれ、説明されたのだが、今度はそれがわからない。また、資料にかえって読み返すという作業をずっとくり返した。
 かつて医者は専門用語を学ぶために医学部に行くのだといった医者がいたが、科学者も同じように、まずはじめに覚えた言葉が科学用語だったのだろう。
 言葉は本当にむずかしい。
 文章もむずかしい。わかりやすく説明したつもりでも、これが届いていない。ゲラを読みながら、そんなことを思った。