病院祭りつながりで


 富士見高原病院の前身は、富士見高原療養所という名称で結核の療養所として知られている。堀辰雄の『風立ちぬ』はここが舞台になっているし、竹下夢二はここで51歳で亡くなっている。
 現在の病院の敷地のなかに富士見高原療養所の建物の一部が残されている。
 結核に対して有効な抗生物質のなかった時代、療養が治療の中心だった。
 いつよくなるのかわからないというか、いつ死ぬかという不安のなかで療養生活を送った結核患者たち。その人たちの思いが残っているような病棟だった。
 もちろんいまは使われていないが、残すことに意味はあるだろう。
 横溝正史もこの療養所で結核治療をしている。
 結核はなくなった病気ではない。いまでも結核にかかる人はいる。いい薬があるにしても、隔離されて治療は行われる。
 社会と隔絶されたところで起きるさまざまな出来事。作家ならずとも、イメージをかき立てられる。