人はなぜ眠るのか

 春眠、暁を覚えず、という季節がやってきました。そこで、今回は眠りについて。
 人はなぜ眠るのでしょう。
 まず知っておきたいのは、疲労回復システムとして、眠ることがわたしたちのからだにプログラムされていることです。わたしたちのからだが「眠るようにできている」といってもいいでしょう。
 そして、夜になると眠くなるのは、眠りが体内時計によってコントロールされているからです。疲労回復システムを稼働させるために、体内時計も働いているのです。
 体内時計は、眠りや目覚めだけでなく、体温、血圧、脈拍などの自分の意志では動かすことができない自律神経系、さらにホルモンなどの内分泌系、免疫・代謝などもコントロールしています。
 この体内時計が1日というリズムを刻んでいるのですが、これが24時間ではなくて25時間なのです。しかし、朝起きて、太陽の光を浴びると体内時計がリセットされます。夜遅くまで起きていて、朝なかなか起きられないという人は、朝の光を浴びることが大切です。
 面白いことに朝に光を浴びて体内時計がリセットされ、夜になったら眠くなるように体内時計が時を刻んでいきますが、眠くなる時間が大体決まっています。若い人は、朝起きてから夜眠くなるまでの時間が14〜16時間。7時に起きたら、夜の11時ぐらいに眠くなります。お年寄りになると、この時間が短くなります。12〜14時間になります。
 レム睡眠、ノンレム睡眠、という言葉を聞いたことがあると思います。脳を休める睡眠と体を休める睡眠といいかえることもできます。
 レム睡眠、このときは目の玉が動いているといいます。ラピッド(RAPID)、つまりすばやく、アイ(EYE)は目、ムーブメント(MOVEMENT)は動き。この略がレムです。
 レム睡眠の時は、脳は働いています。自律神経も働いています。血圧も比較的高く、脈拍も早め。ただし、筋肉は弛緩して、だらっとしています。レム睡眠のときに、脳が起きていますが、昼間に脳に入ってきた情報を整理しているといいます。記憶を脳に定着させているともいえます。 
 徹夜をしてまったく寝ないで試験に向かっても思い通りにできなかったという経験があるでしょうが、これは記憶が脳に定着する時間がなかったからですね。ちなみに夢を見るのもレム睡眠のときです。朝目が覚めたときに夢の内容を思い出せないのは、レム睡眠のときは、情報を記憶に定着させているのですが、そのときに起きていることを記憶する機能は、低下しているためといわれています。
 よく夢診断などといわれますが、これは思い出そうとしているときの心理状態が大きく影響するといわれています。
 ノンレム睡眠は、Non―Rapid―Eye―Movement。目の玉が動かない睡眠状態です。これは脳を休ませる睡眠といわれています。
 大脳の発達した人間は、その大脳の機能を維持するために十分な休息が必要になりました。高等な動物ほど深いノンレム睡眠が必要といわれています。事実、ノンレム睡眠がよく働いています。
 ノンレム睡眠のときは、自律神経の働きも落ちています。代謝もゆっくり。一方筋肉も起きているときほどには緊張していませんが、レム睡眠のときのように弛緩はしていません。
 電車の中で居眠りをしますが、駅を乗り越さないですむのはノンレム睡眠が浅い状態だからです。ノンレム睡眠が深くなってくると、首をまっすぐ保っていられなくなって、隣の人に寄りかかるようになります。このくらいになると、駅を乗り越す恐れも出てきます。もっと深いノンレム睡眠になると、多少の物音では目が覚めません。このときに無理矢理起こされると、瞳孔が開いているのでまぶしく感じるはずです。ノンレム睡眠のときに起こされると、脳が休んでいたわけですから、つらいのです。
 このレム睡眠とノンレム睡眠がセットになっています。あわせた時間は90分。寝ている間にこの90分がくり返されるのです。
 23時ぐらい寝たとします。寝てすぐに浅いノンレム睡眠、脳を休ませる睡眠に入ります。それから深いノンレム睡眠に入り、その後24時15分ぐらいに寝返りをうって浅いノンレム睡眠に入り、最初のレム睡眠に入ります。寝入ってから、最初のレム睡眠が現れるのは、普通の人で60分から120分の間といわれています。これをくり返すのです。
 寝ているときに成長ホルモンが出ているのをご存じですか。成長ホルモンは、成長期の子どもに必要なホルモンですが、大人にとってもたいへん重要なホルモンです。成長ホルモンがからだの若返りと関係しているといいます。アメリバージニア大学で、成長ホルモンとからだの働きについて調べた結果、成長ホルモンを補充すると、階段の上り下りができるようになったり、バランス感覚がよくなったり、心肺機能をよくする効果もあったそうです。
 なかでも顕著だったのが、皮膚。皮膚の弾力がよくなり、とくに表皮のケラチン層が厚くなって、若々しい皮膚が戻ってきたそうです。女性の肌荒れは、寝不足が原因かもしれませんね。
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 眠りに悩んでいる方は、ぜひお読みください。