朝は4本、昼は2本、夕は3本で歩くもの

 これはいったいなんだ? とスフィンクスが聞いたらしい。答えは人間。赤ちゃんのときははいはいをし、それから2本足で歩くようになり、年をとるとステッキを使って3本足になる。この人間の変化をタイトルのようないい方をして質問し、それに答えられないものを亡ぼしたという。
 事実はもちろんわからないが、義父の転倒を防ぐ目的で、2本のストックを購入した。従来持っていたステッキは、T字型の握りがあり、それをつかんで体重をかけるのだが、握りが腰から下にあり、ステッキに頼ろうとするといっそう前に重心がかかってしまう。それに1本では、からだを支えることができない。
 これでは、坂道を下りるときは前に倒れる可能性が高くなり、非常に危険である。
 山歩き用のストックは2本あり、スキーのストックと同じような握りがある。そこをつかんで歩こうとすると、自然とからだが立ち上がり、前方をしっかりと見ることもできるし、前に重心がかかることもなくなる。腕はストックと直角になっている。
 しかし、これで歩くときの転倒は防げるかというと、そんなに簡単なものでない。ストックが流れ、足元より後ろにいってしまえば、前にある重心を支えることができずに転倒してしまう。常にストックは前になければならない。
 そもそも重心をからだの中心に持ってくることができればいいのだが、これがなぜかできない。
 おそらくからだのバランスを保つ能力が老化とともに衰えているようだ。
 からだのバランスを保つためには、運動だけではなく、脳も十分に使う必要がある。
 転倒を防ぐことは、簡単なことではない。しかし、これが脳を鍛え、さらにからだを鍛えることにつながっていることは事実である。