支えるのは4本の足

 93歳の義父に山歩き用のストックを2本購入した。従来のステッキを使っていたころと違い、背筋がまっすぐになり、少し遠方を見るようになった。前にかかっていた重心が少しからだの中心よりになったようだ。
 従来のステッキを使うより、ウォーキング用のストックを使うことをお勧めしたい。これを早くから使っていれば、からだの重心が前にかかるようになるのを防ぐことができるかもしれない。義父には、もっと早くから使ってもらえばよかったと思っている。
 ところで、義父の足の運びを見ていると、利き足である右足から歩き出すときはいいのだが、左足から踏み出すときによろけることが多い。もし、よろけても踏みとどまってもとに戻ることができれば、転倒することはなくなる。
 よろけてしまい、その状態を元に戻すことができないから、ころぶ。
 これはバランスが悪くなったときに、元に戻すことができなくなっているからではないだろうか。
 さらにバランス感覚そのものも悪くなっているのではないだろうか。
 つまり、もとに戻ろうとするのは、筋肉の力だけでなく、バランス感覚も必要になってくる。これが衰えているのだ。
 家の中のわずかな段差でもころぶから、段差をなくすことが大切だといわれているが、一方でバランス感覚を保持することも重要ではないだろうか。
 バランス感覚は、ふだんの生活ではなかなか鍛えることができない。
 わたしたちの住んでいるところは、山の中なので、家の前の道は舗装されていない、砂利道である。
 比較的小さな石がひきつめられているのだが、中には多少大きな石も混ざっている。大きな石に足を乗せれば、当然バランスが崩れる。ここを毎日歩いていれば、自然とバランス感覚が鍛えられるはずだ。
 近くに住む知り合いが、毎日犬の散歩で歩いているが、砂利道を歩くだけでも腰痛がよくなったといっていたが、これも砂利道の効用だろう。
 山に入れば、舗装された道などはなく、凸凹した道が続く。秋になって枯葉が落ち、道に広がると、その柔らかさに歩いていてもほっとしたものだ。そんなことも思い出す。
 何気なく歩いている道も、義父と暮らすようになっていろいろと発見がある。