たったふたりの稲刈り



 稲刈りがはじまった。長坂町、塚川にある田んぼはきちんと整備され、大型のコンバインも入れる。かつては、棚田のような状態で、それを区画整理し、それぞれの田んぼを大きくとった。その費用は、数億円。そのおかげで、田んぼでの作業は機械化が進み、コンバインも入れるようになったのである。
 2反部ぐらいの田んぼなら、コンバインで稲刈りをすれば40分ぐらいで、稲からお米ははずされ、稲藁も細かく砕かれて田んぼに巻かれる。お米は、トラックに積まれ、乾燥場へ運ばれる。そこで一気に乾燥されて、新米のできあがりというわけだ。
 わたしたちの田んぼでは、一条刈りの機械(バインダー)を使って、稲を刈り取って束ねていく。束ねた稲を稲架といわれる物干し竿のようなものにかけていく。この稲架を、わが地方では牛という。重ねた棒が、角をはやした牛のように見えるかららしい。
 稲は、天気がよくて、温度がそこそこ高いと1週間から10日で乾燥を終える。それから脱穀をする。わたしたちが稲を育てている圃場では、コンバインで稲刈りをするところが多いが、牛を建てて、稲をかけるところも結構ある。田んぼの大部分はコンバインで稲刈りをし、わずかに残した稲は牛にかけて、天日干しをする人もいる。自分のうちで食べるのだろうか。
 わたしたちの田んぼでは、すべてこうした手作業で行う。
 じっくりと天日干しした新米は最高である。
 お米はすべて無農薬、化学肥料も使っていない。こんなことをしているのは、わたしたちぐらいか。
 そんなわけで、昨日のようにすばらしい晴天なのに、田んぼで働いているのは、わたしたちふたりだけだった。
 田植えと稲刈りは農家にとっていちばんのイベントのはずなのに、広々とした田んぼには師匠とわたしのふたりだけ。なんともさびしい。