ある悲しみ

 産婦人科医のいない町は滅びます。
 これは、ある病院の院長の言葉です。
 産婦人科医のいない町、つまり子どもが生まれない町。
 確かに、そこは、人の暮らすところではないかもしれない。
 この病院では、なんとか産婦人科を復活させようと、2年にわたり、さまざまな努力をしてきた。
 赤ちゃんが生まれるために、産婦人科医だけでなく、小児科医が常勤になることが必要で、そのために常勤してくれる小児科医をまねいた。
 いつ生まれるかわからない赤ちゃんのために、緊急処置がすぐにできるよう、産婦人科医が住む家を病院のすぐ近くにつくった。
 院長だけでなく、病院全体で、医師も職員も、赤ちゃんが生まれる病院にしようとがんばってきた。
 それが頓挫してしまった。
 わたしも『産婦人科が生まれる病院』というテーマで書こうを思っていたのに。ショックだった。
 しかし、産婦人科は生まれなかったが、助産師を中心に、赤ちゃんが生まれるようにしたいと院長は語る。医師がみんなで助産師さんをバックアップしたいという。
 院長はまだまだあきらめない。
 地方の小さな病院が、地域の人たちのためにがんばっている。産婦人科は生まれなかったが、その活動は書きたい。
 医師不足が日常になりつつあるいま、それに対して、小さな病院なのに優秀な医師を集め、研修医も受け入れる病院。そんな病院のすべてを書きたい。