冬のかゆみをとりたい

 ちょっと長いのですが、冬のかゆみに関して、FM八ヶ岳の放送用の原稿をつくりましたので、ご覧ください。
◆かゆい、かゆい。冬のかゆみのシーズンの到来
 いよいよ冬本番。毎朝新聞を取りがてら、ウォーキングをしているのですが、泉ライン沿いに温度計があって、毎朝見るのですが、このシーズンでいちばん寒いときはマイナス8度でした。最近はほとんどマイナスです。
 新聞を取って引き返すころには、少し暖かくなっていつもなら1度ぐらい上がるのですが、先日は1度下がりました。このときにマイナス8度を記録したのですが、いや寒かったのですね。
寒さがぶり返してきたのです。このときは、肌がでている顔が、寒さでぴりぴりと刺されるような感じで、本当に寒かったですね。
 これからぴりぴりした寒さが日常になっていくのです。
 ところで、寒さが本格的になってくると、すねや太もも、脇腹、腰などがかゆくなってきませんか。
 ちょっと肌もかさかさしてきています。
 かゆいからといって掻いていると、湿疹ができたりします。
 このかゆみを何とかしたいですね。冬のかゆみは男女を問いません。年齢も問いません。
 かゆみの原因は、乾燥です。湿度が低く、空気も乾燥していますから、皮膚の表面から水分がどんどん蒸発してしまうので、乾燥するわけです。また、寒さから身を守るために、末梢血管が収縮して血液の量が少なくなります。当然、皮膚の新陳代謝が悪くなります。皮膚を守っている皮脂という脂の分泌も少なくなり、水分も減ってきます。
 皮膚の内と外から、乾燥がはじまるのです。
 ちなみに皮脂の分泌量ですが、女性の場合40代から少なくなるのですが、男性では60代からといわれています。
 わたしもそろそろ肌の乾燥を感じています。

◆かゆみを察知する神経が肌の表面に
 かゆみを感じる神経は、皮膚の表面まできていません。皮膚のいちばん外側は表皮といいます。表皮の下に真皮という層があります。ちなみに、表皮は、皮脂膜、角層(天然保湿因子や角質細胞間脂質などで水分が保たれています)によってできています。
 かゆみを感じる神経は、この表皮と真皮の境目あたりまでしか伸びていません。
 ところが、乾燥して表皮が荒れてくると、表皮の細胞から神経の成長を促す物質が分泌され、かゆみを感じる神経が伸びてくるのです。皮膚のバリア機能が失われていますから、外からの刺激がダイレクトに神経に伝わりますから、かゆくなるわけです。また、皮膚の内部からヒスタミンという物質も放出され、かゆみを引き起こします。これまた内と外からかゆみの原因が現れるというわけです。
 かゆいから掻きたくなりますが、それが刺激となってかゆみはさらにまします。掻き続けていると、赤みのある湿疹ができます。こうなると治療が必要になります。その前に、皮膚の乾燥を防ぐことですね。

◆かゆみを防ぐためにしたいこと
 乾燥を防ぐのがいちばんです。湿り気を保持する、保湿剤が必要ですね。保湿剤の中身をみていると、尿素という成分があり。尿素の「尿」というと、おしっこを連想しますね。気になりますね。
 尿から発見されたので、尿素といいます。尿素は、水素と酸素という水の分子が非常にくっつきやすい性質を持っています。ですから、尿素の入ったクリームを塗っておくと水分が保持されるわけです。尿素が配合されているクリームをたくさん見かけます。
 尿素以外には、水分を保持する成分としてヘパリン類似物質というのがあります。これは医師の処方が必要な薬だったのですが、市販薬も出てきました。
 この成分には、血行をよくする、角質に水分を保持する、血液を固まりにくくするなどの働きがあります。水分を保持するだけでなく、血行をよくする成分が含まれているので、効果があるようです。
 ただし、血液を固まりにくくする働きがあるので、出血しやすい人、出血性の疾患、血友病、紫斑病などの人は使えません。この成分が含まれている薬品をインターネットで検索したら、すべて売り切れでした。
 失われる水分を保持するというものは、セラミドがあります。セラミドはもともと皮膚の表皮、角質層にある角質細胞間脂質の主成分です。セラミドを外から塗ることで、角質細胞間脂質を補おうというわけです。
 角質層は表皮にあるのですが、角質細胞はブロックのように重なって皮膚を守っています。この角質層の間にあってセメントのような、接着剤の役割をしているのが角質細胞間脂質ですが、その主成分がセラミドです。
 この細胞間脂質ですが、お風呂に入ったり、乾燥したりすると、けっこう簡単に溶けたり、蒸散したりします。
 このセラミドを補給してブロックを立て直し、皮膚の乾燥を防ごうというものです。
 これまでは皮膚の中の話でした。
 皮膚を脂で覆ってしまえば、乾燥も防げるだろうというのが、ワセリンです。ワセリンというと、わたしたちの世代では野球のグローブに塗りましたね。
 ワセリンが一番安いかもしれません。ワセリンを上手に塗るには、少し工夫がいるようです。まず、塗る前に塗りたいところをしっとりさせておくこと。お風呂上がりでしたら、いいですね。それにてのひらを温めておく。てのひら同士でこすり合わせておくといいかもしれません。温めたてのひらにワセリンを伸ばして、それを足や手に塗っていきます。横方向、ぐるぐると回る感じで塗っていきます。
 擦り込むより塗る感じ。強くこすらないことです。足などは2回に分けて塗るといいでしょう。
 さて、こうした保湿剤の種類にもいろいろあります。ローションタイプ、クリーム、軟膏など、自分にあったものを使いましょう。
 1週間ぐらい使ってみて、刺激がなくて使い心地がいい、効果があるものを選びたいですね。
保湿剤は朝と晩にたっぷり塗ります。専門家にいわせると、保湿剤の使い方が少ない人が多いようです。たっぷり使う。保湿が目的ですから。
 1日に朝と晩の2回は塗ってください。
 お風呂に入ったあとなら、10分以内。お風呂に入った直後は、皮膚も水分を吸収しているのですが、これもすぐに蒸発していきます。お風呂上がり10分を目安にしてください。
 かゆみがおさまったからいいと思ってやめてしまうと、再び皮膚が乾燥します。かゆみがぶり返します。乾燥が続く冬の間続けてください。

◆ふだんからかゆみを防ぎたい
 保湿剤を塗るには、お風呂上がりが最適という話をしました。このお風呂ですが、入浴剤を使ってもいいでしょう。ここでお勧めしたいのは保湿剤が入った入浴剤です。入浴剤にも保温を目的としたものもあります。からだを温めることもいいのですが、冬のかゆみをなくすには保湿剤の入ったものを。
 お風呂でもからだはごしごし洗わない。たわしでからだを洗う人もいますが、よほど皮膚の強い人ですね。
からだ全体をタオルのようなもので洗うのも1週間に一度ぐらいで、ふだんはまあ汚れているところだけを洗えばいいのではないでしょうか。
 できるだけ泡を立てて、泡で洗う感じです。決してごしごしこすらないこと。
 お風呂の温度も高いと、皮脂膜や角質細胞間脂質が壊れてしまいます。それに入浴後、からだがほてってかゆくなることがあります。38〜40度ぐらいいいでしょう。
 肌着ですが、ちくちくしたものはダメ。綿のものがいいといいます。静電気の出るものもよくありません。静電気が刺激となって、かゆみが出てくることがあります。
 部屋の中の湿度も大切です。加湿器を使って部屋の湿度を保ちましょう。

◆そのかゆみは大丈夫
 冬に起こるかゆみの話をしてきましたが、いろいろな方法をとってもかゆみがおさまらない、湿疹もできたというときは、皮膚の病気のこともあります。
 保湿剤を使っているけど悪化した、冬を過ぎても症状が治まらないなどというときは、皮膚科に行ってみてください。
 皮膚の病気のこともありますし、からだのほかの病気の可能性もあります。
FM八ヶ岳でこんな内容の放送をしています。よろしかったら、本番をお聞きください。毎週水曜日、11時より。