圧迫骨折を見逃すな

 義父が昨年の暮れあたりから「腰が痛い」「寝ていてもいいか」といって横になることが多くなった。さらに、歩くことがおぼつかなくなり、ずるずると歩き、すぐに何かにつかまりたがるようになった。歳のせいだろう、と軽く見ていたが、歩行が困難になると同時期、食欲がなくなり、ほとんど食事をとらなくなった。
 このままほうっておけないと、病院に連れていたったところ、神経内科の医師は圧迫骨折を疑い、レントゲンを撮り、さらにMRIで確認したら、腰椎の圧迫骨折が見つかった。
 圧迫骨折とは、骨がすかすかになってしまった結果(骨粗鬆症)、ほんのわずかな衝撃によって起こる骨折のことで、高齢者ではとくに腰椎で起こることがおおい。義父の場合も、腰椎の圧迫骨折が見つかった。
 腰椎が骨折して、おそらく神経を刺激し、痛みがあったのだと思われる。痛みがあっても、高齢者の場合、それがうまく伝わらず、もしくは伝えることができずに、症状が悪化すると思われる。義父の食欲不振も痛みが原因ではなかったのではないだろうか。
 痛みがあったためか、着替えも排泄も自らできなくなった。それまで、自分で着替え、トイレにも行っていたのに、それらはまったくできなくなってしまった。
 いままでできたことが突然できなくなるには、理由がある。それが義父の場合、圧迫骨折だった。
 入院させ、安静にしていたところ、痛みも少なくなり(痛み止めはもちろん服用していた)、ベッドで起き上がることもできるようになった。それから歩行の訓練をはじめ、杖さえあれば歩くことができるようになった。
 じつは、医師からリハビリをしましょうといわれていたのだ、93歳という超高齢者にリハビリがどのくらい効果があるのか疑問だったが、見事に功を奏した。
 家の中では杖なしで歩くことができるようになった。この回復振りに感心した。リハビリは93歳という高齢者でも十分に効果があるのだ。
 高齢者がいままでできたことが突然できなくなる。これには原因がある。圧迫骨折を疑ってみることをお勧めしたい。レントゲンとMRIで確認できれば、回復も可能である。
 義父の場合、認知症は進んでしまったが、日常生活は送れるようになってきている。
 これから、まさに介護が必要になるのだが、本人に痛みなどがないことがうれしい。