電気カミソリ

 ひげは、カミソリでそるもの。これがわたしの長年の習慣である。
 いつそるか。勤め人をしていたときは、朝起きて顔を洗ったときにそるようにしていた。
 こちらに越してきて、もっぱらお風呂に入ったときにそるようになった。頭を洗い、ひげを剃る、これが入浴のときにすることの一番と二番である。歳をとってきたせいか、ひげもあまり生えなくなり、ひげそりは1日おきになっている。それも面倒と思うときは、2日おきになることもある。
 わたしの父は新しいもの好きで、わたしが物心ついたときから電気カミソリを使っていた。電気カミソリを使う前にひげそりの滑りをよくするために、パウダーをひげにはたいていたのを思い出す。
 わたしはいわゆるカミソリを使ってきたが、東京にいたときに行きつけの床屋さんで、電気カミソリは肌に押し当ててそるので、ひげが出ている「丘」の部分を傷つけてしまうから、よくないといわれた。床屋さんで使うカミソリは、この「丘」の部分をなでるようにそっていくので傷つけない。だから、いいんですよといっていたが、そのためにはカミソリの切れ味がよくないといけない。だから、彼はカミソリをいつも研いでいた。
 さて、頬に手を当ててみたらざらっとする。鏡を見たら、ひげがけっこう生えていた。
 そこで、義父の置いていった電気カミソリを使わせてもらった。義父もカミソリ派だったが、思うようにひげがそれなくなり、しかたなく電気カミソリを使うようになったのだが。意外と簡単にひげがそれた。電気カミソリもいいかなと思ったが、ひげを温め、カミソリを当ててそったほうが気持ちいい。やはり、わたしもカミソリ派なのだ。電気カミソリは便利でいいのだが、ひげそりぐらいこだわっていようか。