弱毒性と強毒性

 新型インフルエンザにふれておきたい。
 弱毒性といわれている。毒が弱いから、そんなに怖くないと思ってしまいがちだが、この場合の弱毒性とは、インフルエンザウイルスがとりつく場所が、気管支などの呼吸器と限定されているからで、いわゆる毒性が弱いということとは異なる。
 スペイン風邪も、新型インフルエンザと同じ型で、弱毒性だったが、4000万人以上の人が亡くなっている。
 ウイルスのとりつく場所が限定されていても、その力が強ければ、亡くなる人はふえる。
 強毒性とは、ウイルスがとりつく場所が、呼吸器だけでなく、消化器など、からだ全体に及ぶ場合をいう。強毒性のウイルスで、その力が強ければ、亡くなる人はいっそう多くなるだろう。鳥インフルエンザウイルスが、このタイプである。
 新型インフルエンザのウイルスが、変異する場合、からだ全体にとりつく強毒性になるのか、もうひとつその力が強くなるのか、もしくはその両方か。
 これは、なかなか予測がつかない。

 ところで、わたしたちは、ウイルスを完全に殺す方法をまだ見いだしてはいない。その力をそぐことや増殖を抑えることはできるようになったが、もちろん油断はできない。

 かつてウイルスの専門家と話をしていたときに、ウイルスは生きているものに寄生するのだが、宿主が亡くなってしまえば、自らも生き続けることはできない。
 できるだけ宿主に生き続けてもらうように、その力も抑え込んでいるのはないだろうか、ウイルスも進化しているのではないだろうかという話だった。

 今回の新型ウイルスは、若い人に多く感染しているが、これもできるだけ元気なからだにとりついて、自ら生きる道を探っているのかもしれない。
 
 流行はいっとき納まろうとしているが、本当に油断してはいけない。