田植えとクイーン

 ようやく田植えのシーズンが終わった。
 コシヒカリ、餅米、黒米と3種類の米を5枚の田んぼに植えていく。
 黒米は手植え。コシヒカリ、餅米は機械で植えるが、わたしたちが使っているのは、乗用の4条植え、6条植えといったものではなく、2条植えで、しかも田んぼの中にしっかり入って植えていく。
 それを見ていた、部落の人は、「いま、田んぼの中に入って、田植えをするのは、○○さんのところぐらいだ。おらたちは、水につかることはないよ。稲刈りも機械でやるから、あっという間だ。なんかずいぶん昔のやり方だな」と感心する。
 完全無農薬なので、田植えのあとは草取りが必要で、じつは昨年から草取りのときは、MDウォークマンで音楽を聴きながらすることにした。
 今年はクイーン。耳元から流れるフレディ・マーキュリーの声は何とも田んぼに合う。
 時折南アルプス八ヶ岳を見ながら、背伸びをしつつ、クイーンを聞く。よかったー。
 ロックが自然にぴったり合う。クイーンだからかも。
 以前山形でわたしたちと同じように、無農薬米をつくっている人に話を聞いたことがある。
「米つくりは、わずか2000回ぐらいの経験しかない。自分でいえば、30回ぐらいだろうか。いまや1秒間に何百、何千とものができるのに、わたしたちは何十回という程度の経験でものをつくる。だから、経験をぜひとも生かしてもらいたい。それを伝えていきたい」
 と熱く語ってくれた。
 確かに、米は1年に1回しかつくれない。その経験もわずかである。
 だから、いい。
 田んぼの水に足を入れて、苗を倒さないように慎重に歩いていると、自然を本当に実感できる。
 これがじつにいいんだなー。