緑がみるみる濃くなっていく

 東京に打ち合わせに行く。今回は、デザインの打ち合わせなどで、久しぶりにバスの中でも資料も読まない。音楽を聴きながら、バスの窓から山々の緑を見る。
 濃い緑が目立つ。新緑の、若々しい、新鮮な緑もいいが、たくましい緑もいいものだ。
 緑のグラデーションが、梅雨の合間でいっそうきれい。
 聴いていた音楽は、ジャズオルガンである。なかでも、ミッシェル・ペトルチアーニとエディ・ルイスの「デュオ・イン・パリ」がよかった。 
 そもそもピアノとオルガンのデュオが珍しいが、ペトルチアーニのピアノがとてもいい。昔、ブルー・ノートで彼のトリオでの演奏を聴いたが、そのときもとてもよかった。
 不自由な体で、しかし、楽しそうに、ダイナミックに弾く。
 家に帰って、ペトルチアーニのCDを引っ張り出して、原稿を書きながら全部聴いた。
 みんなよかった。かつて聴いたときには、すごいと思ったが、なかなかいいといえなかったが、いま聴いてみるとすごくいい。とてもいい。
 ペトルチアーニは、36歳で亡くなった。62年生まれだから、わたしなんかよりずっと若いのに。
 ブルー・ノートでの彼のトリオ演奏がCDになっている。そのライナーノートで、中川耀さんが、「ペトルチアーニのピアノは、人生は喜びだ、音楽は喜びだ、泣いている暇なんかどこにある。人は喜びのために生きているんだ。と語りかけている」とある。
 その通りだ。
 緑がどんどん濃くなっていくのを感じながら、ペトルチアーニを聴くといいよ、と勧めたい。