虹立ちて雨逃げていく廣野哉

 高浜虚子の俳句である。
 昨日は、あまりにもよい天気だったので、小諸へ行ってきた。休日は人も多くなるので、出かけないようにしているのだが、すばらしい晴天に誘われてしまった。
 小海線に乗り、終点の小諸まで小旅行の気分を味わった。
 左手に見えていた八ヶ岳が車窓から去ると、右手前方に浅間山が見えてくる。
 稲刈りを待つばかりの田に、コスモスがよく映えて、いかにも秋らしい雰囲気である。所々にリンゴが実っているのものも見える。やはり信州。
 
 小諸には、高浜虚子の記念館がある。記念館のすぐ横に虚子が小諸にいたときに住んでいた住まいが公開されている。8畳と6畳二間の小さな家。鶯谷にある子規庵より少し小さいか。古い昔のガラス戸がはめ込まれている。家の中にはこたつが切ってあるが、これではさぞかし寒かったことだろう。戦争を逃れるためにきたようだが、約4年間。きびしい風土に接した虚子の「詩」精神が新たな躍動を見つけたとしおりにあった。
 世話になった、小山栄一氏に送った12の句が表装され、六曲一双の屏風になっている。
 虚子の筆がなかなかいい。
 力強いものではないが、決して弱々しくもない。筆の確かさを感じる。
 しかし、日曜日なのに、小諸の町は人通りがまったくない。虚子記念館にも人がいなかった。お茶と美鈴飴をごちそうになった。
 駅のすぐ近くの懐古園に寄ったら、観光客がけっこういたが、町中には人は少なかった。
 観光地には人がいるが、町には人がいない。地方はみなそうなのか。

 
 タイトルにあげた句のような風景に出会うことがある。虹が山際に出て、雨がさっと去っていく。それもこの地に住んでいるおかげ。