「がん」はいい病気

 いいタイトルだな。
 わたしの尊敬する医療ジャーナリスト丸山寛之さんの本のタイトルだ。
 丸山さんに出会ったのは、わたしが駆け出しの健康雑誌の編集者だったころ。
『この酔狂な医者たち』という本を読んで、文章がとてもよく、わかりやすいだけでなく、ユーモアがある。軽妙という言葉がまさにぴったり。
 この人に記事を書いてもらおうと、コンタクトをとったのが最初である。お目にかかって、ますます好きになった。
 医療とか健康とか、体のこと、病気のことを記事するのだから、わかりやすいことはもちろんだ。
 それだけは足りない。
 なかでも、明るく書くのはかなりむずかしい。丸山さんにはそれがある。
 読んでいて楽しい。どんな深刻なものでは、笑ってしまうこともある。
 勝手に師匠と思っているのだが、丸山さんが久しぶりに本を出した。
 さっそく読んだ。
 がんになった、聴覚を失ったという体験談である。
 それがまったく暗くない。思わずほほえんでしまう。
 こんな素敵な文章は、わたしには書けないが、そのスタンスは学びたい。できれば、ものにしたい。
 
 それにしてもいいタイトルだ。これもヒット。わたしはそう思う。
 読んで絶対損はしない。お勧めです。