わたしを襲った突然の吐き気

 その正体は?
1吐いたり下痢をしたりする胃腸炎が大流行
 今日は、わたし自身がかかった病気について話してみたいと思います。
 じつは、2月の末のある日、おなかの具合が悪く、渋るというのですが、下痢とまではいかないのですが、下痢のような感じがあって、何かいやだなと思っていました。
 その日、カミさんは用事があって出かけていて、夕食は外食にすることにしていました。わたしは、おなかの具合が悪いから、軽く、温かいそばにしておくといって食べました。カミさんは、揚げ物の定食を食べていました。
家に帰り、ちょっと悪寒がするような感じがして、風呂にも入らず寝ることにしました。パジャマに着替えようとしていたら、ものすごい吐き気に襲われ、トイレで夕食に食べたものはすべて吐いてしまいました。
 吐いたら少しすっきりしたのですが、でも何か胃が重いという感じが残っていました。それでも、横になっていたら、少しよくなってきました。
 カミさんは、お風呂から上がり寝ていましたが、夜更けに突然起き出してトイレに行ったようです。吐いたようですが、わたしはうつらうつら。カミさんに翌朝聞いてみると、まだまだ胃に食べものが残っている感じで、その日は一日中気持ちが悪いといって横になっていました。
 カミさんはまったく食べたくないといっていました。が、水分だけをとったほうがいいので、スポーツドリンクのような電解質を含んだ水分を飲んでいました。これが美味しいといっていましたら、こうした飲みものをからだが欲していたのだと思います。
 結局丸1日、水分以外は口にしませんでした。
 わたしは、寝る前にすっかり吐いたからかもしれませんが、翌朝はおかゆをすこし食べましたし、昼食、夕食も少しですが、とることができました。
 わたしもカミさんといっしょにスポーツドリンクはよく飲みました。
 じつは、わたしとカミさんと同じように、吐き気がしたり、吐き気だけでなく実際に吐いたり、下痢をしたり、熱が出たりという知り合いが多くいました。
 みなさんお医者さんにかかるまではいかなかったのですが、おなかの具合が悪いといっていました。
 これはいったいなんだろう。
 先日、東京で開業されているお医者さんを取材したときに、それが判明しました。

感染性胃腸炎って何?
 その先生のところでも、年明けから2月にかけて、わたしたちと同じような症状を訴えてくる患者さんがたくさんきたそうです。
 先生ご自身もかかってしまい、たいへんでしたといっていました。
 病気の正体は、感染性胃腸炎
 感染性胃腸炎とは、ウイルスや細菌、寄生虫などの感染によって起こる胃腸炎のことです。
 ノロウイルスというウイルスを聞いたことがあるでしょう。ノロウイルスによる感染症、これが感染性胃腸炎の典型です。
 取材させていただいた先生のところでも、ノロウイルスもありましたが、ノロウイルスでないものもあったようです。ウイルスが原因と思われますが、まだどんなウイルスなのか、特定されていないようです。
 ノロウイルスの流行は毎年12月がピークで、1月になるとおさまっていました。今年は、新型インフルエンザの流行があって、12月ごろはみなさん、手洗いなどをきちんと実行されていたのではないでしょうか。
 それが今年になって、インフルエンザの流行がややおさまってきて、手洗いなどが多少雑になってきました。これが感染性の胃腸炎の流行の元になったようです。
 手洗いをしているかどうかをずっと観察することはできませんが、マスクをする人は非常に少なくなってきています。これはみなさんが、少し気を緩めてきた証拠ではないでしょうか。
 手洗いもインフルエンザの流行時とくらべると、必ずすることが少なくなってきている、少し簡単になっていたのではないでしょうか。
 そんなわけで、感染性胃腸炎の流行が少し後れてやってきた。
 ノロウイルスは、おなかの症状が出るカゼといわれてきました。
 2002年の国際ウイルス学会で、ノロウイルスと名付けられたのですが、症状はわたしがかかったときと同じですね。
 大体1日か2日でよくなります。
 ただし、お年寄りや幼児は、吐いたものをのどにつまらせたり、誤嚥性肺炎といいますが、肺に細菌などが入り込んだりして肺炎を起こすことがありますから、注意が必要です。
 ノロウイルスは、十二指腸から小腸の上部で増殖して、胃腸炎を起こしますが、ウイルス自体が毒性を発揮することはありません。
 高齢者がたくさんおられる施設などでは、注意が必要です。
 感染は、口からの感染です。ウイルスは、十二指腸や小腸で増殖します。当然、糞便にも含まれています。また、吐いたものの中にも含まれている場合があります。吐いたものを処理したときに手につくことが考えられます。また、吐いたものが乾くとウイルスが空中に浮遊するともいわれています。ですから、徹底的に処理する必要がありますし、処理にたずさわった人は手洗いなどをはじめ、消毒としっかりする必要があります。
 自宅でも同じです。
 ノロウイルスは、ほんのわずかな量でも口から入ると、感染するといわれています。それが十二指腸などで大量に増殖して、感染につながるので、よけいに注意が必要です。
 わたしたちがかかったのは、ノロウイルスかどうかはわかりません。ウイルスのチェックを受けていませんから。

3どんな治療法があるのか
 感染胃腸炎の原因が、ノロウイルスのようにウイルスが原因の場合、治療法はありません。
 取材させていただいた先生も、食事をとらないでじっとしているしかないですといっていました。水分不足にならないようにすることが大切です。スポーツドリンクのような吸収のよいものをとるといいようです。それもいっぺんにとるのではなく、少しずつ少しずつとりましょう。
 温めてとるといいという話もあります。電子レンジで温める方法もあるようです。
 一日か二日なら、これでいいでしょう。よくならない場合はお医者さんに行くことです。素人判断で、感染性胃腸炎だと思いこむのは危険です。
 重要な病気が隠れていることもありますし、長い間食事がとれないのはよくありません。
 下痢をすると、下痢止めを飲みたくなりますが、むやみに下痢止めを飲まないほうがいいといわれますが、これは医師に相談したほうがいいでしょう。
 一日二日でおさまればいいのですが、そうでなければお医者さんにいってください。
 予防策は、手洗いです。
 ウイルスが口から入るのが経口感染です。ウイルスが口に直接入ることもありますが、手についたウイルスを口に付近にもっていて、それが口にはいることが多いのではないでしょうか。
 何気なく口元に手をやるというのは、よくあることです。無意識に口元に手を置く。口のまわりを手で拭くのもよくやります。
 このときに、ウイルスが口から入る。これが経口感染です。
 防ぐには、手についたウイルスを洗い流す。流水でよく手を洗うことです。それから石けんでしっかり手を洗う。
外出から帰ったら手を洗う。食事の支度をする前にきちんと手を洗う。
 これが防ぐ方法です。

 3月3日の放送原稿ですが、明日はちょっと外出しますので、1日早くアップしました。