医者に頼らない生活6食べもの編3

 この放送原稿を書いていて、驚いたことがある。
 それはアメリカ人の死亡原因を調べていて、かつて日本と同じようにがんが死亡原因のトップだったが、ある運動をきっかけに、がんによる死亡者数が減っていき、心臓病にトップの席を譲っていったということだ。
 それが食べもの。
 食べものでがんを予防できることが証明されたのではないだろうか。
 医学者に限らないが、わたしたちももっと食べものに注目すべきだ。
 そんなわけで、食べもの編の3回目をどうぞ。
 お届けした曲は、ケイ・スターで、「モア・ザン・ユー・ノー」「ジャスト・イン・タイム」「イット・ハッド・トウー・ユー」です。

医者に頼らない生き方6食べもの編

1ジャガイモはいいらしい
 食べもの編も、今回で3回目。いよいよ野菜です。
 やっぱり野菜はいいんですね。
(関さんは、野菜はお好きですか?答えて)
 野菜で思い出すのは、わたしの場合ジャガイモです。健康雑誌の編集をしていたころ、ジャガイモを絶賛する先生に会いました。
 いわく、ジャガイモは、ビタミンCがたいへん豊富だ。大航海時代にジャガイモをたくさん積んでいった船の乗組員は壊血病にならなかったが、ジャガイモを積まなかった船では壊血病が蔓延し、みな亡くなってしまったなどと。
 大航海時代海上を何ヵ月も航海するわけですから、食べものはたいへん重要です。しかし、そんなにたくさんのものを積み込むわけにもいかないし、腐ってしまうものもあります。
 そんなときにジャガイモは、けっこう日持ちがいいし、なにしろビタミンCが豊富。ビタミンCは、わたしたちの体の中でつくることができない栄養素ですから、外から補給する必要があります。
 ビタミンCが、豊富な食べものといえば果物を思い浮かべますが、長期間保存が利かない。そして、ビタミンCが不足してくると、襲ってくるのが壊血病
 壊血病は、ビタミンCが不足することで起こります。どんな症状かというと、毛細血管が弱くなって、全身で出血しやすくなります。皮下、歯茎、関節内で出血が起こり、亡くなる人も出てきます。からだが非常にだるくなり、関節が痛んできます。
 乗組員全員が亡くなってしまい、幽霊船になる多くの場合は、この壊血病が原因といわれています。
 帆船時代が終わっても、壊血病はなくならず、1747年にレモンジュースを飲ませると壊血病が治ることがわかり、それから徐々になくなっていったようです。
 ジャガイモのビタミンCですが、温州ミカンと同じぐらいの量があります。ジャガイモのビタミンCは、でんぷんに守られているので熱に強い。ビタミンCは、普通加熱すると一気に失われてしまうのですが、ジャガイモのビタミンCは違うのです。
 それにジャガイモはカリウムが豊富で、血圧を下げる働きがありますから、高血圧の予防にもいい。
 個人的にいうと、ジャガイモは好きですね。ジャガイモと小松菜、それにベーコンが入ったコンソメスープがありますが、スープの中でもいちばん好きです。これはカミさんのお母さんが作っていたものですが、何が食べたいといわれると、このスープをいいます。

2ベジフルセブンを知っていますか
 好きな野菜の話をしてしまいましたが、ベジフルセブンという言葉をご存じですか。
もとは、アメリカの国立がん研究所がはじめた運動です。1991年、当時アメリカの死因のトップだったがんを防ぐために、食習慣を改善しよう、と国を挙げて取り組みました。
 そのひとつが、「ファイブ・ァ・デイ」1日に野菜を5サービングとりましょうという運動です。サービングとは、握りこぶし大の量で、アメリカでの食事のときの量を現します。葉野菜なら1カップ、生または調理された野菜、果物なら、1/2カップ。これが1サービング。
 1991年当時、この運動はわずか8%の人しか知りませんでしたが、10年後に50%に上昇。アメリカ人の野菜をとる量も確実にふえました。
 そして、注目したいのは、アメリカでの死因のトップががんではなくなったのです。アメリカがん学会が公表していますが、1930年に統計を取り始めて以来2003年には、がんによる死亡者の数も減ってきたそうです。
 がんはそれ以前に死亡原因のトップではなくなったのですが、死亡者数でいうと、高齢化や人口の増加にともなって、2003年までは増加していたのですが、これも減少に転じたのです。
 原因は手術の向上などもありますが、やはり生活習慣の改善が功を奏したといってもいいでしょう。
「ファイブ・ァ・デイ」に加え、加工した穀類や砂糖の代わりに全粒穀類をとること。高脂肪の肉を避けること。食べものを選んで肥満を防ぐこと。こうした活動が食習慣を変え、がんを防いだのです。
 食べものを変えることでがんは防げるといってもいいでしょう。
 さて、アメリカのこうした活動が、日本にも取り入れられました。もともと日本人は野菜をけっこう食べていたのですが、減ってきました。
 平成14年の統計ですが、1日野菜で279g、果物は132gしか食べていないのです。この量がどのくらいということは少し置いておいて、この状況に対して、「健康21」という厚生労働省が提唱している健康増進運動のなかで、野菜は350g、果物を200gとろうとしています。
 野菜の量を知るために、野菜それぞれでどのくらいの量があるかというと、キュウリ1本、ニンジン1本で約100gです。キャベツ葉の大きなもので100g、ジャガイモは大きいもので150g、果物でいうと、バナナ1本は90g、リンゴは1個で250gですから、けっこうとらなければならないことがわかります。
 ベジフルセブンは、これをわかりやすくするために、野菜料理を5皿、果物を2皿、食卓に用意しましょうという運動です。ベジはベジタブル、フルはフルーツの略です。セブンは7皿、もちろん小鉢でもいい。
 野菜を量でみることはあまりしませんから、野菜を料理したお皿や小鉢で数えるのはいいかもしれません。しかし、いわれてみると、野菜を本当にとっていませんでした。
 わたしも大いに反省しています。もっととらないと。
 この運動が、もっともっと広まることを願っています。

3野菜の思わぬ効能
 野菜は、ビタミン、ミネラルなどが豊富ですが、最近話題になっているのは、ファイトケミカルといわれるものです。
 ファイトケミカルは、野菜のなかに数千種類以上含まれているといわれています。体の中の酸化を防ぐ抗酸化作用、がん細胞をふやさないようにする抗腫瘍作用などがあります。
 野菜と食べるときに感じる「えぐみ」のようなものといってもいいでしょう。たとえば、抗酸化作用といいますが、野菜は日光を浴びて大きくなりますが、日光には紫外線など有害な光線もあります。これを遮断して、必要なものだけを取り入れています。この遮断しているのが、ファイトケミカル
 このファイトケミカルを200種類以上含んでいる野菜が、ブロッコリー。いまのところ、こんなファイトケミカルを含有している野菜はありません。緑黄色野菜の中でも、王様といえるのはブロッコリーです。
 ブロッコリーには、発がん物質の活性化を抑えるイソチオシアネートが含まれています。
 ビタミンC、体の中でビタミンAに変わるカロテンなどを豊富です。これはともに抗酸化作用があります。
 インスリンの働きを応援するクロム、胃潰瘍を防ぐビタミンU、加えて食物繊維を豊富です。
 ブロッコリーは房の部分だけでなく、茎の部分にもビタミンCや食物繊維が多いので、茎も捨てないで調理しましょう。
 ブロッコリー以外でからだにいい野菜はトマト。トマトを赤くしているのはリコピン。青いトマトが赤くなるのは緑の色素が分解され、赤い色素のリコピンが出てくるからだそうです。
 リコピンは、アスタキサンチンと同じように抗酸化作用があります。トマトには、カリウムなども豊富ですが、そのほか、ケルセチンという物質があって、これは毛細血管を強くして、動脈硬化を防いでくれます。
 ニンジンも同じように赤いもので、βカロテンという体の中に入ってビタミンAに変わるものが豊富です。
 ビタミンAは、粘膜の乾燥を防いで、細菌感染に対する抵抗力を高めてくれます。また、活性酸素ができるのを防ぐので、高脂血症動脈硬化の改善効果が期待できます。がんなどの悪性腫瘍を抑える働きもあります。
 ビタミンAは、体の中の脂肪に溶けるので、とりすぎには注意が必要ですが、βカロテンという体の中で必要なだけビタミンAに変わるので、とりすぎの心配がありません。
 野菜は赤いもの、果物も赤いものがいいようです。
果物で赤いものといえば、リンゴですね。リンゴポリフェノールという成分が見つかり、老化を防ぐ作用のあることがわかりました。活性酸素のために心臓がどんどん老化してしまうモデルのマウスを使った実験ですが、リンゴポリフェノールを与えると、このマウスの心臓の老化が劇的に抑えられたのです。
 リンゴポリフェノールは、リンゴの皮のすぐ下にたくさんありますので、できれば皮ごととりたいですね。