医者に頼らない生き方8ボケを防ぐ

 井上ひさしさんが亡くなられました。だいぶ昔のことですが、健康雑誌の編集をしていたころ、「笑いと健康」のようなテーマで、井上さんに対談に出ていただいたことがあります。内容はすっかり忘れてしまいましたが、わたしたち編集者にもずいぶんと気を使っていただいたことを覚えています。
 井上さんの作品は、好きでずいぶん読みました。お芝居もいくつも見に行きました。『父と暮らせば』という映画も観ました。ひょっこりひょうたん島はテレビで見ていました。井上さんが薦めてくれた本もずいぶん読みました。いろいろ教えていただき、本当に感謝しています。
 
 
 むずかしいことはやさしく、
 やさしいことは深く、
 深いことは愉快に、
 愉快なことはまじめに
 

 この言葉は、私にとってたいへん大切な言葉です。このようにものを書き、話をしたいと思っていますが、なかなかそうはできません。道は遠しです。
 井上さんは、これを目指し、そして確実にものにしていった。
 尊敬する作家でした。
 ご冥福をお祈りします。

 
 さて、医者に頼らない生き方ですが、来週はちょっと忙しいので、ちょっと早いのですが、来週放送分の原稿を紹介しておきます。フライングです。
 お送りした曲は、『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』です。以前女性ボーカルで3曲お送りしましたが、今回は男性版。トニー・ベネットナット・キング・コールフランク・シナトラです。
 それでは。

医者に頼らない生き方8
1またまたびっくりした
 医者に頼らない生き方というテーマで話していますが、いろいろ調べているうちに、知らなかったことにいくつも行きわたりました。アメリカでがんが減ってきたということもそうですが、今日お話ししたいのはインドの話です。
 インドの発展がすさまじく、コンピュータの世界ではインド人の働きなしでは、前に進まないという話を聞きます。もともとゼロという概念を世界ではじめて持った国民ですから、ゼロ、イチで構成されているコンピュータには強いのだと思います。
 わたしが驚いたのは、インド人とアメリカ人でアルツハイマー病の患者数ですが、70〜79歳の患者数で比較すると、アメリカ人のほうがインド人より4.4倍も多い。80歳以上で比較しても3.9倍も多いのです。いいかえると、アメリカ人と比較してインド人のアルツハイマー病患者は約4分の1だということですね。
 これはいったいなぜでしょう。
 理由のひとつとしてあげられるのが、カレー料理です。わたしはインドに行ったことはないのですが、テレビの旅番組を見ていると、朝からカレー粉の入った料理を食べているみたいですね。
 いわゆるカレーライスだけではなくて、いろいろな料理にカレー粉を使っているようです。各家庭に香辛料を細かくする大きな乳鉢のようなものがあって、それで香辛料を細かくくだいて料理に使っています。
 カレー料理に欠かせない香辛料といえば、ターメリックです。日本ではウコンと呼ばれています。最近はテレビのコマーシャルで「ウコン」をお酒を飲む前に飲んでおくと二日酔いにならないといわれていますが、沖縄ではウコンをよく食べるようです。以前、沖縄に行ったときに春ウコンが市場にたくさん売られていました。料理に使うのだと思いますが、沖縄で聞いたときにウコンを飲む前に飲んだり食べたりしておくと、本当に二日酔いにならないそうです。
 カレー料理の黄色はウコンの性ですが、ウコンの主要成分がクルクミンです。じつは、クルクミンにアルツハイマー病の原因となる物質をできにくくする働きがあるのです。
 アルツハイマー病は、脳に「アミロイドβたんぱく」という物質が繊維状に結合して、それが毒性を持つために周囲の神経細胞が死んでいくことで起こるとされています。
 この「アミロイドβたんぱく」を除去するか、繊維状になっていくのをくいとめるか、繊維状になったものを切り刻むか、さまざまなアプローチが進んでいますが、まだ決定的な方法は見つかっていません。
 金沢大学大学院の山田正仁教授らの研究で、「アミロイドβたんぱく」を含む溶液にクルクミンを加えると、アミロイドたんぱくが繊維状になることが大幅に抑えられました。
 また、繊維状になったアミロイドたんぱくにクルクミンを加えると、繊維が分解したそうです。
 アルツハイマー病に必然的になるように改良したマウス、こうした実験動物をつくっているのですね。このマウスにクルクミンを与えたところ、アルツハイマー病によって発生する老人斑が30%も少なくなっていました。普通食を与えたマウスとの比較です。
 実際に人口比率で比較すると、インド人でアルツハイマー病になる人が少ないことを考えると、カレーには効果があるといえるでしょう。
 朝、昼、夜とカレー粉を使った料理を食べているのですから、クルクミンをとる量もすごく多いのではないでしょうか。
 これから、もっと積極的にカレーライスを食べるかな。

狂牛病はどこにいったのか
 狂牛病、正確にいうと、牛海綿状脳症という病気があります。牛の脳の内部に空洞ができて、スポンジのようになり、死んでしまう病気です。これは、細菌やウイルスといった病原体ではなく、たんぱく質が変性したものが原因です。羊や鹿で同じような病気があり、人間の場合、クロイツフェルト・ヤコブ病と呼ばれています。一時期、非常に話題になりましたが、最近あまり報道されませんね。
 なぜ、突然狂牛病のことをいいだしたかといいますと、アルツハイマー病とクロイツフェルト・ヤコブ病というのは症状が非常によく似ています。ヤコブ病かアルツハイマー病か、それがわからないのです。アルツハイマー病で亡くなった人の脳をきちんと解剖しているわけではありません。場合によって狂牛病かもしれないのです。きちんと病理解剖をしないとわからないといいます。
 症状がきわめてよく似ている。
 じつは、アメリカでアルツハイマー病の患者が急増しています。アメリカでアルツハイマー病と診断され、亡くなった人は1979年857例でしたが、2004年には460万人(推定)。2050年には1600万人になるそうです。
 2008年にアメリカで狂牛病にかかった牛を肉にして、学校給食に出していたニュースがありました。狂牛病が報道されなくなりましたが、なくなったわけではないのです。米国産の牛肉は本当に安心なのですかね。
 インドでは、ヒンズー教の人は宗教上の理由で牛肉をほとんど食べません。よく町中を牛がゆっくり歩いていたり、歩道に寝そべっていたりする映像を見ますね。牛自体が敬われているようです。そのほかの宗教の人もいますから、まったく食べないといえませんが、インド人の8割はヒンズー教です。牛肉を食べない人が多いといえるでしょう。
 アルツハイマー病の中には、狂牛病の可能性があるとすると、インドでアルツハイマー病が少ないのは牛肉を食べていないから、といえるのではないでしょうか。
 もちろん、簡単にはいえませんが、なんだか腑に落ちるのです。
 毎日食べるものは、本当に重要です。新しい病気が起こる可能性もありますし、メタボリックシンドロームのように、症状が軽くてもいくつも病気が重なると心臓病になったりする。これも多くは食事が原因です。
 もう一度しっかり食事を見る必要があります。食べるということをきちんと考える必要があります。