医者に頼らない生き方9治療より予防を

 多田富雄さんが、亡くなられました。『寡黙なる巨人』は、正岡子規の『病状六尺』に通じる名作です。
 多田さんの中で、おそらく巨人は立ち上がったと思っています。人生の最期を迎えて、きっと屹立したに違いありません。
 ご冥福をお祈りいたします。

 さて、今回は医者に頼らない生活も9回目。治療より予防が重要と方針を変えたアメリカの政策を紹介しています。
 お送りした曲は『フィーバー』マイケル・ブーブレ、ニッキ・パロット、レイラ・ハサウェイです。

医者に頼らない生き方9
アメリカが行ってきた国民のための健康対策
 アメリカ人というとどんなイメージを持っていますか?
 わたしは、太っている人が多い、忙しく働いている人はものすごく働いている。よく食べる、よく話す、陽気という感じです。
 アメリカというのは面白い国で、何かはじめると一生懸命やる国だなと思いました。それを感じたのは、あるレポートです。
 1960年代の後半、アメリカではいまでいう生活習慣病にかかる人はふえて、国民の医療費が膨大にふくれあがり、心臓病の治療費だけで米国経済がパンクするような状況になってしまいました。
 これを受けて、当時のニクソン大統領がアポロ計画に投じていた巨額な予算を振り向け、まずがんの死亡率を半減させようとがんに関する治療技術の改善をはかったのですが、効果は上がらないばかりか、がんにかかる人の数は年々増え続けました。
 そこで、治療より予防対策を作っていこうと方針転換していきます。これがすごい。
 まず、アメリカ人の間で問題になっていることは何か、アメリカ人に多い病気は何が原因になっているのか。それをどうすれば予防できるか。
 これを調べるために、「国民栄養問題アメリカ上院特別委員会」というものを作ります。
 7年間にわたって、当時の金額で約200億円をかけて、「食事と健康・慢性疾患の関係」とテーマで、アメリカ人の食事内容はもちろん、世界の食生活を収集します。3000名を超える専門家、医学と栄養学の専門家によってそれを検討させました。
 昨年、テレビで立花隆さんががんについてレポートをしていましたが、その中で世界中からがんに効くといわれる動植物を集めて、研究している機関を取材していましたが、やるとなったら徹底してやるようですね。その数は膨大でした。
 このレポートですが、委員会の委員長だったマクガバンの名前をとって、マクガバン・レポートといいます。
 マクガバン・レポートの中で、アメリカ人の食生活を「諸々の慢性病は、肉食中心の誤った食生活がもたらした『食原病』であり、決して薬では治らない」としています。
 病気が細菌などによって起こるものだけでなく、食事や栄養の偏りによって起こるとした最初の公的な文書といわれています。
 食生活の改善が第一というわけです。
 まず、肉食中心の食生活(脂肪の大量摂取)をあらためよというわけです。それに大量の砂糖、食塩を控えよ。それをしないと、アメリカ人の健康は保てない。こう宣言したのです。

2次はいよいよがん対策です
 マクガバン・レポートを作成した委員会が、アメリカ国立がん研究所に対し、食事とがんの関係の研究を依頼しました。これが次のテーマ。
 そして、発表されたのがデザイナーフーズです。
 植物性食品に含まれている化学物質の中でがん予防に効果があるものをピックアップしていました。わたしたちが知っているものでは、カテキンなどのポリフェノール、野菜や果物の彩りである天然色素、ハーブなどに含まれているテルペンなどです。検討した化学物質は数万種類だそうです。効果があると判断したのが600種類の中からさらに選んだものが40種類。それをピラミッドのように図式してあります。
 なぜピラミッドなのか、わたしにはわかりませんが。
 そのピラミッドを紹介します。
 上にいくほど効果が高いとされています。
 いちばん上の最上段には、ニンニク、キャベツ、甘草、大豆、ショウガ、ニンジン、セロリ、パースニップ(白ニンジンのようなもの)が並んでいます。
 中段は、タマネギ、お茶、ターメリック、全粒小麦、玄米、オレンジ、レモン、グレープフルーツ、トマト、ピーマン、ブロッコリー、カリフラワー、芽キャベツ
 下段は、マスクメロン、ハーブ類(バジル、タラゴン、ハッカ、オレガノ、タイム、ローズマリー、セージ)、アサツキ、キュウリ、ジャガイモ、カラスムギ、大麦、ベリー。
 わたしの大嫌いなものがありますが、ほとんどがスーパーでも手に入ります。
 こうした食品を積極的に食卓に載せていけば、がんは減らすことができる。事実、アメリカではがんは少なくなりました。

医食同源という思想
 医食同源とは、簡単にいってしまえば、食事で病気を治そうということです。栄養バランスのいい食事をしていれば、病気にもならないし、治すこともできる。
 なんだか中国伝来の言葉のような気がしますが、日本で生まれた言葉なんです。いまは中国に逆輸入されているようです。
 バランスよくというのがむずかしいですね。
 そこで、わたしが懇意にしている先生の受け売りですが、食卓に7色の食材を集めるという方法です。
 まずは野菜。赤色の食材はトマトやニンジン、赤ピーマン、トウガラシ。緑色はほうれん草など葉ものの野菜、ブロッコリー、緑のピーマン、キャベツ、レタス、アスパラガス。黄色はカボチャ、黄色ピーマン、ウコン(カレーの元となるもの)。白色はダイコン、カブ、タマネギ、白菜。紫色は茄子、紫タマネギ、紫ニンジン、レッドレタス。茶色はゴボウ、黒色はごま。ざっと数えただけで7色の野菜があります。
 野菜だけではありません。果物も色で分けられます。赤色はイチゴ、スイカ、熟した柿、黄色はバナナ、ミカン、パイナップル、マンゴー、白色は梨、桃、ライチ、紫色はザクロなど、これまたいろいろあります。リンゴのように表面は赤いのですが、中は白というのもありますから、正確に色で分けることはできませんが、ほぼ7色に分けることはできるでしょう。リンゴは赤色でしょう。
 肉はどうでしょう。牛肉の赤身の肉を調理すれば、茶色になります。鶏肉は、調理をしても白ですね。レバーなら、赤かな。
食卓に並んだ料理でもいいですから、7色がそろっているか、見てください。7色そろっていれば、それだけさまざまな食材が並んでいる証拠です。栄養が十分に足りていると思っていいでしょう。7色の食卓を目指しましょう。
 これが、わたしたちに簡単にできる「医食同源」。お試しあれ。
 料理をつくるわたしたちは大変なんですとは、この提案を聞いた関さんの感想でした。