医者に頼らない生き方16歯の話続き

 ワールドカップも終わってしまった。
 勝負ごとは、勝つときは勝つ、負けるときは負ける。PKはとくにそうだ。
 PKはサッカーではない、というのは前日本の監督のオシムさんだが、確かにその通り。
 PK以外の決着の方法を探ってみるのはいいだろう。
 それにしても、勝つものがいて、負けるものがいる。これも確かなこと。常に勝者であり続けることはできない。
 また、そうではあってはいけない。

 そんなことを思ってしまった。

 今回は「歯の話」の続きです。
 流した音楽は、リー・ワイリーで、3曲ともすべて「マンハッタン」。クラブで歌っているもの、ラジオの実況、レコードなど、それぞれ雰囲気が違います。
 それでは。

医者に頼らない生き方16
歯の話の続き。
1虫歯や歯周病は細菌によって起こる
 虫歯や歯周病が細菌によって起こるのはご存じですね。
 虫歯に関しては、どんな細菌によって起こるのかもわかってきました。ミュータンス連鎖球菌といいます。ミュータンス菌と省略しましょう。ミュータンス菌は、ストレプトコッカス・ミュータンス、ストレプトコッカス・ソブリヌスなど、7種の菌の総称です。ヒトから、この2種類の菌が検出されることが多いようです。
 ミュータンス菌は、口の中で砂糖をえさに歯の表面に「膜」のようなものを作り、その膜の内側で細菌がどんどん繁殖していきます。その細菌がえさである糖分を分解する過程で「酸」をつくります。この酸も膜があるために外で出ていかないので、酸によって歯が少しずつ壊されていくのです。このようにして、虫歯ができていきます。
 膜ができなければ、唾液によって歯の表面は常にきれいになっています。唾液は、1日に0.5から1.5リットルも出て、口の中を清掃してくれているのです。唾液の働きは清掃だけではありませんが。
 ところで、子どものころから虫歯がない、少ない人がいます。こういう人は、大人になっても虫歯になりにくい。虫歯になりにくい人は、もともとミュータンス菌が口の中にいない人、いてもその数が少ない人です。
 口の中には、ミュータンス菌以外にもたくさんが細菌がいます。いい細菌もいるし、悪い細菌もいる。良くも悪くもない菌もいます。ミュータンス菌も多い人、少ない人がいますが、じつは赤ちゃんのときは、口の中にもミュータンス菌はいません。
 お母さんやお父さん、おじいちゃん、おばあちゃんが赤ちゃんに接している間にミュータンス菌も赤ちゃんの口の中に入っていきます。そして、赤ちゃんも歯が生えていないときは、ミュータンス菌もフアフアと口の中で浮いた状態ですので、胃に送り込まれてしまいます。
 ミュータンス菌が歯の表面につかなければ、虫歯はできません。
 虫歯を防ぐには、ミュータンス菌を無くしてしまうか、歯の表面に膜をつくらないようにすることです。
 そして、この膜をつくらないようにするのは、歯周病の予防にも役立ちます。

2歯を徹底的にきれいにする
 ミュータンス菌を歯の表面からなくす方法があります。これは、専門家にしてくれますが、PMTCといいます。プロフェショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング。専門家による機械的な歯の清掃という意味です。ここでいう専門家とは、歯科衛生士さんが中心になります。PMTCは、歯科医師もできますが、歯科衛生士さんは学校にその技術を学んでいます。歯の表面、歯と歯の間、歯と歯茎の境目などを、専門の器具を使って、徹底的にきれいにしていきます。徹底的にきれいにするために、作業時間は1時間ぐらいかかります。PMTCは保険が適用になりました。
 前回の放送で紹介しました花田信弘先生は、虫歯をつくるミュータンス菌の研究をしていました。花田信弘先生は、イギリスでミュータンス菌のワクチンができたということで、その効果を調べようと、研究者、歯科医師を募って実験をしました。
 まず、虫歯ワクチンの効果を確かめるために、被験者の口の中の状態を均一する目的もあり、被験者の虫歯菌をできるだけ減らそうと、まずPMTCをして、各自きちんと歯磨きをし、それに加えて歯の表面の虫歯菌をなくそうと、ボクシングでするようなマウスピースのようなもの(トレーといいます)の内側に除菌剤を塗ったものをはめて実験しました。
 そして、被験者の口の中のミュータンス菌の状態を調べました。
 すると、被験者のほとんどで歯の表面にミュータンス菌がまったくいなくなったのです。7人で実験したのですが、120日たっても3人の口には、ミュータンス菌は見つからなかった。ミュータンス菌がゼロになったのです。
 つまり、ワクチンを使わなくても、虫歯菌が除菌できることがわかったのです。
 ミュータンス菌を一度しっかり除去して、その後もきちんと歯磨きをしていれば、ミュータンス菌を口の中ら追放できるというわけです。
 トレーの内側に薬剤を塗って、除菌する方法は3DSといいます。デンタル・ドラッグ・デリバリー・システム。口の中には、いろいろな細菌がいます。それをすべて殺してしまってはいけません。3DSは、歯の表面にいる細菌だけを除菌しますから、大丈夫。
 歯を徹底気にきれいすると、舌で歯をさわるとつるつるしていても気持ちがいいものです。PMTCは、歯の汚れをとるだけですから痛くはありません。機械の振動が嫌だという人はいるそうですが。
 3DSも痛くもかゆくもありません。

3赤ちゃんから虫歯を防ぐ
 赤ちゃんの歯が生えそろうまでの間に、お母さんの口の中をチェックして、ミュータンス菌がどのくらいいるのか調べてほしいと思います。ミュータンス菌の数が少なければいいのですが、たくさんいる場合はPMTCをしてさらに3DSで除菌すれば、赤ちゃんにミュータンス菌が移りません。赤ちゃんに虫歯菌が少なければ、一生虫歯にならない可能性があります。
 赤ちゃんを育てているお母さんだけでなく、一度みなさん口の中の細菌の量などを調べてもらうといいですね。
 わたしは調べてもらいましたが、ミュータンス菌は非常に少なかったのです。でも、歯周病は安心できません。
 やはり、丁寧な歯磨きが欠かせません。1日に1回はきちんと歯を磨くことです。歯の表面にできる膜もできあがるのに、18時間かかるといわれています。膜ができる前にとってしまうことです。ちなみにこの膜のことを「バイオフィルム」といいます。
 歯ブラシ、歯間ブラシ、それにデンタルフロス。これらを使って、しっかり磨くことが大切です。
 あとは定期健診です。半年に1度歯医者さんも診てもらいましょう。

4口の中の細菌によって起こること
 お年寄りに肺炎で亡くなる人が多いと、この放送でも何回もいっています。肺炎ワクチンが有効ですが、口の中をきれいにしておくことでも肺炎がかなり防げます。
 肺に細菌が入って炎症を起こるのが肺炎です。歯の表面にくっついている膜、バイオフィルムには細菌がものすごく繁殖します。その中に肺炎を起こす菌もいます。バイオフィルムができないように、もしできてもそれをきちんと除去していれば、肺炎になりにくくなります。
 これは高齢者が生活している施設で口の中をきれいにしたら、肺炎で亡くなる人が減ったそうです。
 いくつになっても、口の中をきれいにしておくことが大切です。