最近読んだ本の中から
最近読んだ本の中から
1『神様のカルテ』より
医療健康関係の本をよく読みますが、この分野での小説の類はあまり読みません。
医療には、病気の治療以外で闘病、そして死と向き合う場面があります。誕生ももちろんありますが。
そこには必ずドラマがあります。当然感動もあります。小説のネタになりやすい。
小説は、ノンフィクションではありませんから、想像のものです。医療の世界には、想像以上のドラマがあります。
ですから、医療の世界を扱った小説は、よほどの書き手でないとむずかしい。うそが見え見えになってしまいます。そんなことはあり得ない、つくり過ぎ。そういうものが多い。事実は小説より奇なりといいますが、まさにその通りのことが起きています
一方で、医療の内容をよく知っている、医療従事者。医師や看護師が書いたものは、それなりにいいのですが、やはり作家ではないわけで。
医師で作家になった人のものは別です。加賀乙彦さん、渡辺淳一さん、北杜夫さん、昔の人でいえば森鴎外さん。
加賀乙彦さんには、臓器移植を扱った『生きている心臓』という本の紹介を兼ねてお目にかかったことがあります。
1991年の本ですから、もう20年以上も前の話ですが、臓器移植を行った医師が「殺人者」として告発される。臓器提供をした家族はどんな思いを抱いたか。脳死とどのような状態なのか。臓器を移植することはどういうことなのかを、医師ならでは書けない部分もあり、また、作家としてこういうテーマにどのように取り組んだかがわかる、いい本でした。
いまもう一度読まれてもいい本だと思います。
話が横道にそれてしまいましたが、『神様のカルテ』という本があります。夏川草介という人が書いたものです。夏川草介は、夏目漱石と芥川龍之介をもじった名前でペンネームだそうです。書いたのは現役の医師です。
舞台になっているのは長野県の松本。相澤病院と思われる病院で働いています。相澤病院は、地方都市の中規模の病院ですが、救急救命では全国に知られています。脳卒中の急性期、心筋梗塞の急性期の治療では有名ですし、北アルプスが近いので山岳救助でも登場する病院です。
この本の中で、ある患者さんが登場します。おばあちゃん。癒しの患者として紹介されています。いつもニコニコ笑っていて、どんなときでも医師や看護師にお礼の言葉を欠かさない。病院の廊下を歩いているときにも、ベッドの上にいるときでも、どんなに苦しいときでも、がんばって看護師に感謝の言葉を贈る。これはたいへんなことですが、それが医師や看護師を動かすのです。
そして、おばあちゃんの言葉や態度によって、医師も看護師も救われる。
こういう患者が登場するのですが、癒しの患者というのもいい設定ですね。
医師も患者も同じ人間です。いつもいっていることですが、患者も医師もお互いさまです。この気持ちが大切だと思っているのですが、なかなかむずかしい。癒しの患者は、それが自分に返ってくる。
近くの病院での話ですが、高齢のおじいちゃんが入院しました。家族はできるだけ居心地がよくなるように、いつも付き添って、おじいちゃんのいうことをかなえてあげようとしていました。
高齢で少しわがままなところもあったのですが、家族が献身的に看病するので、そんなにつらい思いはなかったのでしょう。
あるとき、看護師が足りなくなったのか、理由はよくわかりませんが、夜間に付き添ってくださいといわれました。
完全看護なのに、なぜと思いますが、その家族が喜んでしたそうです。すると、自然と看護師や医師が、その家族の方々にも感謝して、双方の関係がすごくよくなったそうです。
おじいちゃんを看護していた娘さんは、東京で医療クラークの仕事をしていました。いわば、専門家ですから、病院に入っただけで 病院の状態がよくわかります。文句をいうこともできますが、それをしなかった。
あまり評判がよくない病院ですが、その家族にとってはとてもいい病院だといいます。
こちらの出方次第、態度によって、相手も違ってくるのです。
2『100歳までボケない101の方法』
100歳までボケない101の方法―脳とこころのアンチエイジング (文春新書)
- 作者: 白澤卓二
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この本には、101の項目でボケない方法が紹介されています。
オランダで115歳と62日を生きた女性がいました。ヘンドリック・ヴァン・アンデル・シッパーさん。超高齢者が亡くなった後、きちんと解剖されることがあまりないのですが、彼女の遺言もあって、オランダの大学で解剖されました。その報告があるのですが、驚くことに、彼女の脳は衰えていませんでした。
記憶をつかさどっている海馬というところがあります。年齢を重ねるともに委縮していきます。ところが、彼女の海馬はまったく委縮していません。海馬は、ボケの原因といわれるアルツハイマー病の病変が真っ先に現れますが、その兆候もありません。まったく正常でした。
脳の中で、呼吸中枢などがある脳幹に青斑核という神経細胞が集まっているところがあります。ここはわたしたちの生命が脅かされるような事態になると、不安や恐怖を感じさせ、からだに警告を発するところです。ここも、年齢とともに衰え、神経細胞が減っていくといわれています。
この女性は、青斑核の神経細胞が減っていませんでした。脳のほかのところでも、神経細胞が減っていないと思われます。
112歳と113歳のときに認知症の検査や神経学的な診察を受けていますが、いずれも正常だったといいます。
解剖所見では、脳の機能は60歳から75歳の間を保っていました。115歳でも、ボケずにいられるという証拠です。
3115歳までボケずにいた女性の生活
この女性は、オランダの人ですので、よく食べていたのがニシン。オランダでは新鮮なニシンなら生で食べる習慣があるそうです。生でない場合は、塩漬けにしてニシンを、ほぼ毎日食べていたようです。
ニシンもサンマやイワシと同じ背の青い魚です。からだにいい油、DHA、EPAが豊富です。世界で魚をよく食べている人ほど認知症にならないという報告があります。動物実験でもDHAは認知症を予防することがわかっています。
もうひとつ、この女性がよく飲んでいたのがオレンジジュース。
果物のジュースや野菜のジュースを週に3回以上飲む人と週に1回も飲まない人を比較すると、週に3回以上飲む人がアルツハイマー病になるリスクが76%も低下したという報告があります。76%というのは、結構な数値です。
野菜や果物に含まれているポリフェノールがジュースになることで凝縮されるのはないかといわれています。
ジュースがいくらいいといっても、1日に何本も飲んではいけません。糖分が多いので、肥満の原因になります。
1日に1本までです。
こうした食べものから、運動、生活の仕方まで、わかりやすくいろいろな方法101も紹介されています。ひとつでもふたつでもできることからやっていけば、ボケないですみそうです。
ぜひ読んで、ボケない生活を楽しんでください。