瀬戸内国際芸術祭3

 じつは、瀬戸内国際芸術祭は10月いっぱいで終わってしまう。公式サイトでは、残り1週間となり、開場は混雑が予想されますとあり、島へ行く船に乗れない場合あるので注意してくださいと告知している。この芸術祭は、7月19日の海の日から開催され、10月31日で終わる。3カ月と10日間、訪れた人はわたしたちが行った9月末で50万人を超えた。
 9月末の平日に行ったときでも、直島へ行くには乗船に当たって整理券が必要だった。船に乗れる人数は限られている。電車などと違って、安全性を考えると混雑率が100%を超えるわけにはいかない。
 瀬戸内海の島々を利用して、こうした世界的な、大がかりな芸術祭をやること自体すごいことだと思う。
 アートと島のつながりがはっきりしないというようなコメントがあるようだが、島で暮らすことの大変さの一端を知ることだけでも意味があると思う。
 最終日に訪れた男木島で、島暮らしを少し実感できた。家の土台となっているたくさんの石、曲がりくねった細い道、急坂にへばりついているように建っている家々、都会で育った私には、家を観ただけで島にすむ大変さが予想できた。
 男木島は、女木島と対になっているようだ。女木島は、島の中腹に洞窟があり、これが桃太郎の鬼が島と結びつけれた。女木島には行けなかった。
 男木島の作品のほとんどは、島の家の中にあり、作品とともに島の生活を垣間見ることができる。
 わたしが、感動したのは川島猛の思い出玉という作品。これは、ニューヨークにいる川島が9.11テロを目撃し、無力感に襲われていたとき、何げなく手にした雑誌の一部を切り取って丸めていた。雑誌だけでなく、新聞などを丸めていき、大きくなったものは、のこぎりで切れ目を入れた。新聞、雑誌の記事に載っていること、そして記事の奥にあること、時代の気配、人の存在、これらを思い出玉として展示している。ここに訪れた人も、思い思いの思い出玉を作っている。これこそまさにコラージュ。
 
 このほか、島での「水」の大切さを物語る、谷山京子の「雨の路地」さらに、団扇の骨の家など。
 
 男木島を最後に、2泊3日の旅は終わった。金沢八景で育ったので、海は常に身近にあった。いま山の中で暮らしていて、たまに無性に海を観たくなる。瀬戸内にきて、島をめぐりながら、たっぷり海を満喫した。寄せては返す波波…。まさに洗われた感じがする。
 リフレッシュしてくれたのは、瀬戸内海の波だったのかもしれない。