脳梗塞と心筋梗塞の救急医療

1怖い脳梗塞の後遺症
 先日のシンポジウムの、テーマのひとつが救急医療でした。
 脳卒中のなかでも、いまふえてきているのが脳梗塞
 以前は、脳出血が多かったのですが、食糧事情というと大げさですが、食べものがよくなって、たんぱく質をとる量がふえてきました。その結果、血管も強くなり、破れにくくなった。一方、たんぱく質をとると、どうしても脂肪分の摂取もふえてきます。そのために、血液中にコレステロール中性脂肪がふえて、ドロドロになっていきます。動脈硬化が起きて、血栓も生まれてきます。
 動脈硬化によって、血管の内側が硬くなり、狭くなってくると、そこに傷がつきやすくなり、その傷を修復しようとして、わかりやすくいうと「かさぶた」のようなものができます。これがはがれおちて血栓になります。それ以外にも血液が固まりやすくなってきているので、血栓ができやすくなっています。
 脳梗塞は、脳の血管に血栓がつまってしまうことです。血栓、血の塊ですが、これがつまってしまうと、脳の一部に、酸素や栄養が届きません。その結果、酸素や栄養の届かなくなった脳の一部が死んでいきます。
 呼吸など生きていくうえで欠かせない中枢部分の血管がつまれば、亡くなってしまいます。
 命の中枢以外でも、からだを動かす、言葉を話すなどをコントロールしているところの血流が途絶えれば、マヒを起こしたり、話せなくなったりします。
 右(左)半身が動かない、思うように話せない、ものを飲み込めないといった後遺症が残ります。じつは、がんよりもこうした後遺症が残ることから、脳梗塞が怖いと思っている人がたくさんいます。
 医療技術の進歩によって、命は助かるのですが、すでに脳の一部は死んでいますので、後遺症を防ぐことはできません。
 いろいろなリハビリをすることで、ある程度元に戻ることもできますが、完全に元に戻るのはむずかしい。

脳梗塞を起こしたら
 じつは、脳梗塞血栓が原因で起こります。血栓は血の塊ですが、これを溶かすことができます。溶解薬という薬があります。t‐PA。
 t‐PAは、まさに血栓を溶かしてしまいます。
 この薬を使えば、血栓を溶かしてくれるので、脳の血管の血流が回復し、脳も死なずにすみます。
 うまくいけば、後遺症がまったく残らない。
 脳梗塞を起こしても、後遺症が残さずに治るわけですから、こんなにいい方法がありません。
 ただし、この薬は、脳梗塞の発作を起こして3時間以内に使う必要があります。3時間以上たつと、脳が死んでしまうからです。一刻一秒を争う治療です。
 3時間以内といっても、検査などを行う必要がありますから、2時間以内には病院についていなければなりません。もちろん、誰にでも適応できるわけではありません。この適応のチェックも必要になります。
 この治療法が保険の適応になったのですが、どこでも治療ができるわけではないのです。
 たとえば、MRI、CTなどがすぐに撮れる状態にあること、医師がいるのは当然ですが、こうした検査機器を操るレントゲン技師もいなければなりません。
 医師や看護師を含め、検査技師を常に待機させておくような体制はどの病院でもできるわけではありません。
 残念ながら、どこでもできるわけではないのです。

3t‐PAが受けられる病院を紹介します
 このt‐PAができる病院をインターネットを使って調べてみました。
 いろいろ検索して調べていたら、「山梨県地域保健医療計画」というサイトがありました。そのなかに、機能別医療施設一覧というのがあります。山梨県が運営しているサイトです。
 この事業で、山梨県下の病院にアンケート調査をしているのですが、その結果は、県民に公表することを前提としています。
 そこに、t‐PAの治療が可能な病院リストがありました。
 わたしたちが住んでいる中北地域では、山梨大学医学部付属病院、県立中央病院、市立甲府病院甲府城南病院、甲府脳神経外科病院、白根徳洲会病院の6つの病院が対応してくれます。ほとんどは甲府にあります。すぐ近くにはないということです。
 これらの病院に運ばれれば、確実にt‐PAという治療を受けられます。

心筋梗塞に襲われた場合
 脳梗塞と同じように、血栓が心臓を動かしている血管でつまってしまうのが、心筋梗塞です。
 心筋梗塞も一刻を争う病気です。心臓を動かしている血管がつまってしまうのですから、死につながります。
 心筋梗塞の場合、脳梗塞と同じように、6時間以内に、心臓を動かしている血管につまった血栓を取り除く必要があります。専門的にいうと、再灌流療法といいます。
 つまった血管に細い管(カテーテル)を入れて、血栓を溶かす薬を使って広げる方法、静脈に薬を注射する方法、つまった血管に同じようにカテーテルを入れて、細長い風船を使い、血管をふくらまして広げる方法などがあります。これらの方法で、一度つまった血管に再び血流を復活させます。
 これができる病院は、さきほどの「機能別治療施設一覧」によると、中北地域では、山梨大学医学部付属病院、県立中央病院、社会保険山梨病院、市立甲府病院甲府城南病院、甲府共立病院、三枝病院です。
 心筋梗塞の場合も、脳梗塞と検査内容が違いますが、専門的な検査が必要です。
 こうした手術のできる医師も必要です。看護師もいなければなりません。

山梨県地域保健医療計画について
 山梨県地域保健計画の機能別治療施設一覧には、脳卒中や心臓病に対する治療施設以外にも、がんと糖尿病に関して、どの病院がどんな治療をしようとしているかが、○印でわかるようになっています。
 わたしも、こうした情報があるのを知らなかったのですが、もっと公表に力を入れてもいいですね。
 どの病院へ行けば、どんな治療が受けられるのか。これはみんなが知りたいことです。