潜水艦の乗組員がしていた体操

1何か体操のようなものをしていますか?
 東京にいたときに、アメリカ国立保健研究所・老化医学研究所が制作した「50歳からの健康エクササイズ」というビデオを見ながらほぼ毎日体操をしていました。
 15分〜20分ぐらいだったでしょうか。
 アメリカ国立老化医学研究所が総力を挙げて制作したというふれこみでしたし、某有名書店が販売していましたから、信頼してやっていました。
 筋力をつくる運動、バランス力を高める運動、柔軟性を高める運動が、それこそバランスよくとりいれられている。
 高齢者、病気のある人、運動不足の中年の人なら、誰もが家庭で簡単にできるとありました。
 すばらしいでしょう。
 さっそくやりました。ウォーキングより手軽にできるし、家の中でできるから、天気が悪くても大丈夫。
 当時、すでに腎臓が悪いことはわかっていましたから、少しでも改善されるかなと思っていました。
 ところが、腎臓の数値は悪くなっていく一方で、体重も減りませんでした。そんなわけでやめてしまいました。
 もともと飛んだり跳ねたりする体操が苦手だったものですから、体操自体にも、あまり効果がないのでは、と思うようになり、それからはウォーキング一本になったのです。

2寝ながらできる体操
 うちのかみさんは、体操が好きで、話題になっている「きくち体操」なんかもよくしていました。
 きくち体操は、菊池和子さんが考案者。菊池さんは、日本女子体育短期大学を卒業し、体育の先生をしていました。ふたり目のお子さんを産んで、退職し、子育てに専念していたときに、団地の奥さんに体操を教えてほしいといわれたことが、体操を考案するきっかけだそうです。体育の先生をしていたものの、体操を教えてほしいといわれて、何を教えればいいのか、わからない。学生時代の解剖学の本を引っ張り出し、医学系の本を読みあさったそうです。
 結局、体操の目的は何か、というと、美しいからだを保つこと、それは背筋がピンと伸びていて、足もまっすぐ。余分な脂肪がついていないからだです。そういうからだを保つには、筋力を鍛えることです。
 かみさんがしているのを見ていると、手の指を大きく開いたり、足の指を広げたり。いままであまり動かしていないところを動かしています。
 きくち体操もいいと思いますが、わたしはやってみようと思わなかった。
 体操は効果がないというトラウマですね。
 毎朝、新聞をとりがてらウォーキングを40分ほどしていますが、そのときに、犬を2匹散歩させている男性とよく行きあいました。
 その人は、三分一湧水公園の前で、治療院をしている先生でした。彼から、「寝ながらできる体操」を教えているのですが、いらっしゃいませんかと誘われました。体操嫌いなのですが、毎日のように会う人です。
 一度ぐらい行ってみようと体操教室に行きました。
 本当に寝ながらできる体操で、仰向けになって、片足ずつ胸のほうへ折り曲げる、同じく仰向けで片足ずつ足を大きく回すなど、全部で12、3種類あるでしょうか。時間にして10分ぐらいかな。
 簡単にできるので、これは毎日しています。
 じつは、その先生が、「この体操をしているとやせられます」とおっしゃるものですから、やせられるかなと思いつつ、やっています。寝たままでできますから、ベッドの上でもやれます。これがいいですね。

3潜水艦の中で行われていた体操
 作家の山崎光夫さん。山崎さんは、医学・薬学の分野に造詣の深い作家で、『ジェンナーの遺言』『日本アレルギー倶楽部』『精神外科医』などの著作のほか、『病院が信じられなくなったときに読む本』などのエッセイやノンフィクションもあります。
 山崎さんのエッセイに「潜水艦生活から学ぶ無病生活法」というのはあります。山崎さんが取材をしているときに、戦争中に潜水艦の乗組員だったという人にあったそうです。
 潜水艦は、艦内は非常に狭く、空気も悪い、新鮮な野菜など手に入らないから栄養状態もよくない、きわめて劣悪な環境です。
 しかも、いつ敵に襲われるかもしれないという恐怖もある。
 こうした環境の中で、乗組員の健康をどのようにして保つか。これは、軍医の大きなテーマだった。
 そこで、提唱されていたのが、ひとつはガムをかむこと。口の中を清潔に保ち、虫歯や歯周病を防ぐ。
 次に、からだを退化させないために、推奨していたのが、たとえば、てのひらを合わせて、左右から押しつける。指を組んで引っ張りあう、てのひらを合わせ、指を組んで回す。
 足の筋肉で鍛えていたのが、内転筋。太ももの外側は大腿四頭筋という筋肉がありますが、太ももの内側には内転筋という筋肉があります。
 この筋肉を鍛える。内転筋は、まっすぐ長い時間歩くために必要な筋肉で、人に近いチンパンジーも二足歩行ができますが、内転筋が発達していないので、からだを左右に振りながらでないと歩くことができないし、長い時間歩くことができない。
 内転筋を鍛えるには、座って足を開いて、上体を前に倒す。お相撲さんがしていますが、座って両足を開き、上体を前に倒していきます。そして地面にからだをつけます。あの体勢です。おへそをつけるようにするのだそうです。
 わたしもやってみましたが、まったくできませんでした。この体操をすると、太ももの内側がものすごく引っ張られます。これで内転筋を鍛えられるのです。息を吐きながら上体を倒して、起こすときに息を吸う。
 山崎さんも2年かかって、額が床につくようになったそうです。
 息を止めないことが大切です。
 同じく、内転筋を鍛える歩き方があります。
 両膝の内側をつけたまま歩きます。ちょこちょことした歩き方になりますが、ふつうに歩くより5〜10倍の運動量があると、山崎さんはいいます。確かに、このちょこちょこ歩きをすると、けっこう疲れます。
 上体の前屈とちょこちょこ歩きで、山崎さんは腰痛と肥満から解消されたと述べています。
 この体操は簡単ですから、わたしもやってみようと思っています。
 なんだか体操がふえてきたみたいですね。でも、効果がありそう。