今年印象に残ったこと1

12010年印象に残ったこと
 やはり、北杜市の医療を考える会の話をしたいと思います。
 こちらに越してきて、6年。持病のこともあるし、住まいの近くの医療の状況(病院の状態、医師について)はどうなっているのだろうと、知り合いになった人たちに尋ねていました。あまりいい話を聞けませんでした。
 そこで、このままでいいのか、何かできることはないかと、友人3人と北杜市の医療を考える会を立ち上げました。
 会では、やりたいことはたくさんあるのですが、正直どこから手をつけていけばいいのか、迷っていました。
 患者さんの声を聞くというのは、常にしていたのですが、そのうち市立病院で働いている看護師さんたちとも知り合いになって話を聞いたりしていました。
 また、知り合いのご主人ががんの末期で市立病院にかかっていました。家族から市立病院へいっしょにいってお医者さんの話を聞いてほしいといわれたので、医師から患者さんの病態をくわしく聞いて、それを家族にわかるように伝え、家族の要望(痛みをできるだけなくす治療をやってほしいなど)を医師に伝えることなどもしていました。こうして病院の状況は少しずつわかってきました。
 そのうち、医療従事者や介護関係者が集まって月に1回会合を開いていると話を聞き、その会に出席するようになりました。それが「地域で暮らす会」です。
 そこで、救急救命士から市内の救急医療の状況や在宅医療を推進している医師から甲府における在宅医療の実態、訪問歯科診療を行っている歯科医師の話、長野県佐久地方の薬剤師さんの話などを聞いたり、一方でわたしは健康手帳や「わたしのカルテ」づくりなどを提案したり、いろいろみなで話し合ってきました。確かに勉強になりました。
 そのうち、市民を対象に講演会ができないだろうかということになり、わたしが富士見高原病院の話をしました。富士見高原病院には何度取材にも行き、よく知っていましたから。
 富士見高原病院は、長野県にありますが、北杜市に住んでいる人もよく通っているし、隣の病院ですから、その取り組みを話していただこうということになり、副院長の矢澤正信先生に講演をお願いしたのです。
 8月にしたのですが、今年の夏は暑かったですね。会場は、入りきれないぐらい人が集まって、たいへんでした。
 矢澤先生の講演がとてもよくて、地方の病院がいかにして医師を招へいしているか、地域で必要とされている医療とは何かが、非常によくわかりました。「遠くの親戚より近くの高原病院」というモットーがありますが、これが富士見高原病院をよく表しています。いいですね。

北杜市内の患者さんについて
 11月28日にシンポジウムを開催するにあたって、アンケートをとらせていただきました。男女合わせて87名の方が答えてくれました。
 体調が悪いときに利用する医療機関は、クリニックや診療所、そして市立の病院です。月に1〜3回は病院に行く人が多い。病気の内訳は、高血圧がいちばん、腰痛、糖尿病と続きます。
 半数の方がいつも決まった医師に診てもらっています。
 健康診断を受けている人も多い。みなさんからだのことを気になっている。だから、健康診断はきちんと受けているのだと思います。
 薬を飲んでいる人も多い。
 健康のために何かしていますかという問いに、ウォーキングが多いのですが、まだまだ少ない。
 病院や診療所への不満は、やはり待ち時間が長い。
 アンケートには、北杜市の医療をよりよくするためには市民ができることは何か。医師に望むことは何かなど、自由に記載してもらう項目もあります。
 そこに書かれていた意見をいくつか紹介します。
 医師確保の活動に協力する、関心を持ち続ける、医療の充実に熱心な議員や市長を選ぶ、かかりつけ医を持つ、急を要しないときは時間内に利用し、先生が働きやすい環境をつくる、文句をいうのではなく、お互いの意見を交換できる場を設ける、医療にお金を投入することに同意する、勉強をする、病気と上手に付き合っていく、ボランティアをする、みんなで地域の病院を育てていこうという意識を持つなど。
 医療そのものについては、ふたつある市立病院をどうしていくか、往診してくれる医師がほしい、開業医は訪問診療で地域に密着すべき、病院と診療所の連携、住民に情報をオープンにし、問題解決のため協力体制をつくるなど。
 病気予防のために講習会がしてほしい、各病院から情報を発信してほしいなど。
 実にいい意見がたくさん寄せられました。みなさん、自分にできることは何かを考えていらっしゃいます。たいへん力づけられました。

3在宅医療について
 在宅医療、いわゆる往診ですね。
 北杜市のように、お年寄りが多い地域では、病院にこれない人もいます。往診をしてくれるといいですね。
 がんの末期など、終末期には在宅医療をしてくれるシステムがあるのですが、なかなかふつうの往診をしてくれるお医者さんはいません。
 東京などの都会では、診療所は持たずに往診だけをして、診察をしている医師もいます。都会なら、午前中に何軒も患者さんの家を訪問することができますが、北杜市のように広い地域では効率よく回っても午前中に4、5軒でしょうか。もっと回れないかもしれません。診療所や病院から、どのくらいはなれているかによりますが。
 北杜市内でも在宅診療をしてくれるお医者さんはいます。わたしの知っている範囲でいうと、段下といわれる明野、白州、それに、塩川病院は在宅診療をしてくれますが、甲陽病院はできません。
 先日のシンポジウムで、甲陽病院の院長が、在宅医療をやりたいのだが、自分が赴任する前から甲陽病院は在宅診療をしないでくれと、地元の医師会から申し入れがあったとおっしゃっていましたが、長坂や大泉にある診療所やクリニックで在宅診療をしてくれるところがあるのでしょうか。
 往診をしないのに、往診させないような動きがあります。納得いきません。
 もちろん、医師なら誰でも往診ができるわけではありません。診療の合間、時間があるとき往診するとしても、それはかなりの労働を強いることになります。若い医師でないと、むずかしいでしょう。また、診療の診察で手いっぱいという状況もあると思います。
 北杜市の医療の中で、いまいちばんに求められているのは、高齢者のための医療です。それには、在宅医療の充実が不可欠です。早くできるようになるといいのですが。
 何かいい工夫はないでしょうか。