医者にかかるときの10カ条

◆ COMLの新医者のかかる10カ条
−あなたがいのちの主人公・からだの責任者−
(1) 伝えたいことはメモして準備
(2) 対話の始まりはあいさつから
(3) より良い関係づくりはあなたにも責任が
(4) 自覚症状と病歴はあなたの伝える大切な情報
(5) これからの見通しを聞きましょう
(6) その後の変化も伝える努力を
(7) 大事なことはメモをとって確認
(8) 納得できないときは何度でも質問を
(9) 医療にも不確実なことや限界がある
(10) 治療方法をきめるのはあなたです

1. 医者にかかるときの10カ条
 以前、取材でお邪魔した糖尿病を主に診ているクリニックの受け付けに小さなメモのようなものが置いてありました。
 何かなと思って、手に取ると、医者にかかるときの10ヵ条というものでした。
 この10カ条を作成したのは、支えあい医療人権センターCOML。「賢い患者になろう」というスローガンの下で活動しています。
 COMLは、医療を受ける患者さんの背中に回って、応援しようという目的ではじまりました。
 患者中心の医療を実現しようとさまざまな活動をしています。
 患者中心といっても、患者のわがままを聞こうというものではありません。医療従事者も患者もいっしょになって、よりよい医療、患者のためになる医療を構築していこうと運動です。
 当初は、患者の希望ばかり聞いて、医療従事者に文句をいう団体かというようなイメージもあったようですが、活動も約20年になって、いまや医療の現場でも非常に重要な役割を果たしているようです。
 医者にかかるときの10ヵ条もこの活動のなかで生まれたものです。
 ひとつひとつ説明していきましょう。

2. 対話のはじまりは挨拶から
 当たり前のような気がしますが、お医者さんに診てもらうわけですから、よろしくお願いします、ということがはじまりです。
 挨拶もしないで、イスに座って、さあ診ろという態度では、お医者さんとコミュニケーションをとろうとしていないことになります。
 お互いさま、という言葉がありますが、これがたいへん重要です。患者も医者もお互いさま。
 伝えたいことはメモをしていく。
 これは重要です。診察時間は限られていますから。
 先日も、わたしの友人がブログで書いていましたが、いっしょに暮らしているお母さんの薬がなくなったので、いつもいっている診療所に行ったのだそうです。
 混んでいれば、待たされることは覚悟していったのですが、履物を見るとそんなに患者さんはいません。やれやれと思って順番を待っていたのですが、一向に呼ばれる気配がない。
 看護師さんが15分おきにやってきて、お待たせしてたいへん申し訳ありませんとくり返す。何か急病の患者さんか、それとも厄介な病気の人を診ているのかなと待っていると、予約の時間から1時間たってようやく診てもらったそうです。
 時間がかかったのは、ひとりの女性。診察にきているのですが、話しはじめると止まらない。病気以外の関係ないことを延々と話している。
 それは、処方した薬をもらう薬局でも同じ。薬をもらう人が順番で待っているのに、まったくそれを無視するようにカウンターに乗り出して薬剤師と話している。
 早くしてくれないかな、と小声で言ってもまったく気にしない。
 困ったものですが、帰ったあとで薬局の人に聞くと、いつも話しだしたら、止まらないようです。
 限られた時間で、正確に病状を伝えることも必要です。ほかに患者さんがいることを忘れないで。
 質問を前もってメモをしていくといいですね。

3. 納得がいくまで
 これは、自分のからだのことだからです。
 自分のからだは自分で守る、これが重要だといってきました。
 自分のからだのことだから、真剣に納得がいくまで聞くことです。
 お医者さんの話がよくわからなかったということをよく聞きます。なんとなくわかったから、あとをおまかせしました、という人もいます。
 わからなかったらわかるまで聞く、途中でなんとなくわかったから、あきらめてしまわない。
 もちろん診察時間は限られていますから、的確に聞く必要があります。
 生活習慣病のように、長い間付き合うことになる病気の場合は、最初にすべて聞き出さなくても、診察のたびにいろいろ聞いていけばいいと思います。
 わたしの友人が、がんになったのですが、奥さんがすごく勉強して、友人といっしょに診察室に入って、いろいろ質問をしたそうです。
 友人にいわせると、もういいよ、という感じだったようですが、何度か診察にいっしょに通っているうちに、お医者さんのほうから今日は何か質問はありませんか、というようになったそうです。
 がんばって質問をくり返しているうちに、医師との間に親密なコミュニケーションが生まれたのですね。
 これもあきらめなかったからです。もちろん、相手の医師によっても違うと思いますが。

4. 医療は不確実で限界もある
 いまの医療が、すべての病気は治せるわけではありません。
 同じ病気でも、人によって症状には違いがあります。
 現在行われている治療は、ある意味で最大公約数的な治療といってもいいでしょう。
 わたしたちの個性があるように、からだにも違いがあります。薬もまったく同じように効くわけではありません。副作用も違うでしょう。
 お医者さんに行けば、病気はすべてよくなるし、まかせておけば大丈夫というものではありません。
 医療に限界があることを知っておくこと。
 これはなかなかむずかしいのですが、重要です。医療従事者を弁護するわけではありませんが、彼らも同じ人間ですし、間違いもあるでしょう。
 お互いに、いい医療をしよう、受けたいと思っているはずです。
 そこを理解しないと、いい方向にはいきません。
 そして、最後の「治療方法を決めるのはあなたです」という項目です。
 自分で納得し、治療を受けることが大切です。お医者さんにその治療法を勧められたにしても、決定するのはあなたです。
 自分で決めた治療ですから、きちんと向き合うこともできます。
 治療を信頼すること、病気もよくなるそうです。
 そのために、わからないことはそのままにしておかない。